【10月20日 AFP】約40年ぶりに地球に持ち帰られた月面の岩石サンプルの分析により、従来考えられていたよりも後の年代に、月に火山活動があったことが明らかになったとする研究結果を19日、中国の科学者チームが発表した。

 中国の無人探査機「嫦娥5号(Chang'e-5)」は昨年、月の石と土壌を採取して地球に帰還。人類が44年ぶりに成し遂げた月からのサンプル採取ミッションは、中国の急成長する宇宙計画にとって重要な節目となった。

 中国科学院(CAS)の研究チームは、サンプルに20億3000万年前の玄武岩が含まれていたことを解明。玄武岩は溶岩が冷えて固まったもので、これにより、判明している最も新しい月の火山活動の年代が最大9億年、現代に近づくことになる。

 CASは、今回のサンプル分析結果が「20億年前ごろには月の内部がまだ進化していたことを明らかにしている」と指摘した。

 米国と旧ソ連の探査ミッションで持ち帰られた月の石は、少なくとも28億年前までは月の活動があった証拠を示していた。だが、それらのサンプルは、より古い年代の領域から得られたものだったため、28億年前以降の月の歴史に関する科学的知識には空白部分が残されていた。

 嫦娥5号のミッションでは、月の海の一つ「嵐の大洋(Ocean of Storms)」内にあるリュムケル山(Mons Ruemker)から、総重量約2キロのサンプルを収集した。この領域で探査が行われたのは初めてだ。

 この領域が選ばれたのは、隕石(いんせき)が衝突してできた地表のクレーターが比較的まばらだったため、より新しい年代に形成されたと考えられたからだ。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に3件の論文で発表された今回の最新研究結果は、月の歴史をひもとこうとしている科学者に新たな疑問を投げかけている。

 論文執筆者の一人で、CASの研究者の李献華(Li Xianhua)氏は、記者会見で「月はどのようにしてこれほど長い間火山活動を維持していたのだろうか。月は本来小さいので、速やかに熱を消散させるはずだと考えられるのだが」と語った。(c)AFP/Jing Xuan TENG