【10月23日 CGTN Japanese】中国では、秋は全国各地で大小さまざまなテニス大会が開かれるシーズンでもあります。その代表格である「チャイナ・オープン」は、コロナ禍で2年続けて開催を見合わせていますが、アマチュアスポーツとしてのテニスは、中国では更なるすそ野拡大へ期待が高まっています。

 国際テニス連盟が今年8月に発表したところでは、過去1年間に1回以上、硬式テニスを行った推計人口で見ると、中国のテニス人口は1992万人に上り、世界の22.9%を占めています。

 2012年の北京駐在をきっかけに、2014年から複数のテニスクラブに参加して活動を続けてきた日本人の伊藤真帆さんは、これまでに実感した中国のテニスシーンについて、「施設がどんどん充実し、レベルは確実に上がったと思う。前はワンパターンに強打するタイプの人が多かったが、今はボレーなどさまざまなテクニックを使う人が増えている」と評価しています。そして、日本のプレーヤーと比べれば、「中国の人はアグレッシブで、アマチュアの試合でも積極的に攻めてくる。ハングリーにうまい人をつかまえて試合に出るところも面白い、楽しい」と話しました。

 北京には、発足10年ほどで、2万2000人の会員、300のスポーツクラブの参加をひきつけるまでになった「天天有網球(毎日テニスあり)」という市民向けのプラットフォームがあります。レッスンと試合運営が活動の2本柱です。このプラットフォームでは、すそ野を拡大するため、レベル分け以外は、性別、年齢、地域、職業、さらに健常者のテニスと車いすテニスの壁をすべて取り払い、さまざまな改革と工夫を行っています。これと同時に、ハンディがある側へのインセンティブとして、細かい点数の加算システムを導入しています。さらに、実力が弱いプレーヤーほど試合回数が少ないということが起きないように出場チームは同じ回数の試合に出られる工夫も凝らされています。そうした改革の成果として、「天天有網球」のプラットフォームは毎週、毎月のように試合が行われており、最多の参加記録は一回の試合に152チームの計1000人余りだったそうです。

 このプラットフォームの発起人である国家体育総局の元副局長の王鈞(Wang Jun)さん(72歳)によりますと、週3回、一定時間以上の運動をする「スポーツ人口」が総人口に占める割合は、先進国では50%以上に達しているのに、中国ではまだ3割にとどまっています。スポーツ産業のGDP成長への寄与率は先進国では3~5%にも上りますが、中国では2%にも及んでいません。そんな中、今年7月、中国では全国民を対象にした「スポーツによる健康づくり」計画や「全民健身計画(2021-2025年)」が発表され、「スポーツ人口」の割合を2025年までに38.5%に引き上げる目標を掲げています。

 王さんは「サッカーなどのチームプレーに比べれば、テニスは個人の強みが生かしやすく、健康長寿にも良く、魅力的なスポーツだ。スポーツ人口の拡大に大きな貢献ができる」と期待を寄せています。

 一方、2000万人に迫るテニス人口と不釣り合いな状態として、中国のテニスクラブの数はわずか800しかなく、世界全体の0.69%にとどまっています。また、男子プロテニス協会(ATP)、女子テニス協会(WTA)のランキングに入った選手計3619人のうち、中国はわずか100人しか入っていません。ここにテニス強豪国との間にれっきとした格差があります。

「アマチュアスポーツとしてのテニスの普及体制が整えば、そこから必ず優れた選手が誕生する。結果的に、競技スポーツとしてのテニスのレベルアップにもつながる」

 これは元テニス選手で、1990年のアジア大会男子ダブルスで優勝した孟強華(Meng Qianghua)さんの話です。中国では、さまざまな視点から期待がかかっているテニスの大衆スポーツ化の動きが今後もたゆまず続いていきます。(c)CGTN Japanese/AFPBB News