【10月16日 People’s Daily】海南省(Hainan)は中国で分布が最も集中し、保存状態が最も良好かつ、最大広域の熱帯雨林―海南熱帯雨林国家公園を有している。同公園の「澄んだ水と緑の山」はどれほどの「金山・銀山」の価値があるのか? 9月26日に発表された「海南熱帯雨林国家公園体制試行区生態系総生産(GEP)算定成果(2019年度)」によると、2019年度のGEPは2045億1300万元(約3兆6200億円)だったという。

 GEPとは、生態系が人類の福祉と経済社会の持続可能な発展のために提供する各種の最終的な生態系製品とサービスの価値の総和を指し、主に生態系が提供する物質的商品、調整サービスと文化サービスの価値を含む。「GEPが生態系製品に価値のラベルを貼り、経済価値の具体的な額を明確にしたのは、人々に良好な生態が海南の莫大な財産であることを実感させるためだ」と、中国林業科学研究院の李意徳(Li Yide)研究員は述べた。

 生態系製品の価値算定結果の生態保護の補償、生態環境の損害賠償、経営・開発・融資、生態資源権益の取引などへの応用の推進には、GEPの計測が重要な前提条件となる。

 GEPの算定には、主に生態地図の作成、計測指標の確定、データ収集とモデルの構築、現物量の算定、生態系製品の価格設定、価値量の算定などがある。算定の第一歩は、計測しようとする区画をプロットし、区分することだ。国家公園体制試行区の全体は、生態系のタイプ、樹種、樹高、鬱閉度などの属性を各区画に表示された地理的な異なる区画に分けられた。次は計測指標の作成だ。同試行区のGEP算定は、計3種類19項目の二級指標が設けられる。これらのキーとなる指標データを取得するために、研究チームは大規模な野外調査を実施した。固定サンプル土地だけで200個以上あり、訪問とアンケートも実施した。

 計測に基づき、生態系製品の価値を明確にするためには、生態系製品別に価格を設定する必要がある。中国林業科学研究院尖峰嶺生態定位ステーションの陳徳祥(Chen Dexiang)駅長の紹介によると、市場に進出していない生態系製品については、主に代替市場技術と模擬市場技術を通じて、具体的な貨幣価値を得る。「簡単に言えば、代替市場技術とは、価格のない製品を、類似の機能の価格がわかる製品に置き換えて計算することだ。もう1つの模擬市場技術では、支払い意思によって価格を決める」と、陳駅長は述べた。

 算定は生態系製品に価値のラベルを貼ることで、住民のエコ意識を高めた。「郷里のすばらしい山水がこんなに高価だったとは!」と、同試行区に位置する白沙リー族自治県(Baisha Li Autonomous County)青松郷(Qingsong)の郷党委員会書記の符静開(Fu Jingkai)氏は感慨深く語った。

 李氏は、「この『物差し』があれば、生態系製品の総額指標を党委員会と政府の高品質発展の総合業績評価に組み入れることを模索できる。GEPに基づいて生態環境保護の利益指向メカニズムを構築することもできる。同時に、各地で多元化した資金投入メカニズムの確立を誘導し、社会組織による生態公益基金の設立を奨励し、生態系製品のあるべき価値の実現に向かって共同推進することができる」と述べた。(c)People’s Daily/AFPBB News