【10月14日 AFP】チーズとビールの相性の良さはよく知られているが、オーストリアの岩塩坑で働いていた労働者は早ければ2700年前には、ブルーチーズとビールを味わっていたとする研究論文が13日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)で発表された。研究チームは、欧州でチーズが熟成されていた最古の証拠と、ビールが消費されていたことを分子レベルで示す初の証拠だとしている。

 研究チームは、オーストリア・アルプス(Alps)に位置する世界最古の岩塩坑・ハルシュタット(Hallstatt)で見つかった坑員たちの排せつ物のサンプルを分析した。

 ハルシュタットは3000年以上前から塩が生産されてきた町で、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)に登録されている。

 岩塩坑は塩分濃度が高く、気温が8度前後で一定に保たれているため、排せつ物の保存状態が良かった。

 研究チームは4種類の排せつ物の標本、青銅器時代のもの一つ、鉄器時代のもの二つ、18世紀のもの一つを分析した。その結果、このうちの一つ、約2700年前の排せつ物には2種類の菌、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)とサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれていた。

「ハルシュタットの坑員たちは、微生物を利用して意図的に食品の発酵技術を用いていたと思われる。この微生物は、今も食品産業で使われている」と論文の主執筆者で、イタリア・ボルツァーノ(Bolzano)にあるユーラック研究所(Eurac Research Institute)の微生物学者、フランク・マイクスナー(Frank Maixner)氏は述べている。

 研究チームは、今回の発見は、欧州でチーズが熟成されていたことを示す最古の証拠だとしている。

 また、アルコールの消費を示す古い文献や考古学的な証拠はあるが、今回調べた排せつ物からは、当時の欧州でビールが消費されていたことを示す分子レベルでの証拠が初めて見つかった。

 マイクスナー氏は、2000年以上も前に岩塩坑の労働者たちが「意図的に発酵」を起こすほど高度な技術を持っていたことに驚いたと述べている。

 オーストリアのウィーン自然史博物館(Natural History Museum Vienna)のカースティン・コバリック(Kerstin Kowarik)氏は、「先史時代の調理方法が洗練されていただけではなく、複雑な加工食品や発酵技術が人類の食の歴史の初期に重要な役割を果たしていたことが明らかになっている」と指摘している。(c)AFP/Lucie AUBOURG