【10月18日 AFP】米大リーグ(MLB)、ロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)で二刀流選手として活躍する大谷翔平(Shohei Ohtani)は、球界の「フランケンシュタイン(Frankenstein)」ともいわれる活躍で旋風を巻き起こし、ベーブ・ルース(Babe Ruth)氏の伝説の足跡をたどっているが、いまだにごみ拾いをする謙虚さを持ち合わせている。

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 エンゼルスで大躍進を遂げてシーズン最優秀選手(MVP)候補の筆頭に挙げられるなど、大谷は今季MLB最大のスターとなった。

 100年前のルース氏以来、定期的に投打で活躍する選手は輩出されず、多くの選手がどちらか片方に専念したが、27歳の大谷はマウンドでのスキルとバッターボックスでの存在感でファンを驚かせている。

 米誌タイム(Time)は大谷を2021年の「世界で最も影響力のある100人」に選出。その中で元ニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)のスター、アレックス・ロドリゲス(Alex Rodriguez)氏は、「フランケンシュタインのように、全ての特異な才能を1人の選手に詰め込んだら大谷翔平になる」と語り、大谷はすでにルース氏よりも完成された選手だと評価した。

 しかし大谷の魅力は極上のアスリート能力だけにとどまらない。そのまばゆい笑顔と明るい性格、そしていつもファンや報道陣との会話に時間を割く姿勢で周囲をとりこにしている。

 大谷は誰に対しても礼儀正しく、いつもエンゼルスのダッグアウトのごみを片付けている。その理由について大谷は先日、「つまらないけがというか、そういうのは自分もそうですけど、周りの人にはしてほしくない」と説明した。

 東京在住で日本野球界に関する本を数多く執筆する米国人作家のロバート・ホワイティング(Robert Whiting)氏は、大谷は「本物とは思えないほど素晴らしい」と表現した。

「TOKYOジャンキー(東京中毒、<Tokyo Junkie>)」の著者であるホワイティング氏は、「彼はお金をそれほど気にしていない」とし、「彼は純粋主義者だ。史上最高の野球選手になりたいだけなのだ。とても痛快だ」と続けた。

 大谷は当初、高校からプロ野球(NPB)を経由せずMLB入りを目指していた。しかし2013年に北海道日本ハムファイターズ(Hokkaido Nippon Ham Fighters)と契約し、5年間日本でプレーしてからエンゼルスに入団した。

 MLBでの最初の数年はけがに悩まされたものの、2021シーズンは全162試合中、欠場はわずか4試合にとどまり、トップと2本差の46本塁打を放った。

 投げては球速100マイル(約161キロ)を超えるなど、投打にわたる大谷の活躍があったものの、エンゼルスはプレーオフ出場を逃した。

 大谷の一挙手一投足が日本の紙面をにぎわすのは当然で、その偉業の数々は日本人のプライドを刺激した。

 大谷以前には野茂英雄(Hideo Nomo)氏、イチロー(Ichiro Suzuki)氏、松井秀喜(Hideki Matsui)氏らがMLBで大きなインパクトを残した。しかしホワイティング氏の分析によると、身長190センチ、体重95キロを超える大谷は日本人アスリートの認識を変え、「国民の自尊心を大きく高めている」という。

「大谷を見ていると、日本人の体は小さい、または体格で劣っているというイメージは消失する。彼は日本人の新たなスタンダートをつくり、みんなそのことを心から喜んでいる。彼は日本人であることを誇りに思わせてくれる」

 また、ホワイティング氏は大谷が「最低でもあと10年」プレーし続けることができると考えており、大谷本人も「まだまだ上にいける」と信じている。

 シーズン最終戦前に大谷は報道陣に、「もっと自信を持って投げられるように、1年間を通して自分のパフォーマンスができるようにやっていけば、より良いシーズンになると思っている」と語った。(c)AFP/Andrew MCKIRDY