【10月21日 AFP】ウンベルト・ヒメネス(Umberto Gimenez)さんはワニが大好きだ。ワニにあだ名を付け、その滑稽な振る舞いを思い出しては笑みをこぼす。

 米フロリダ州のエバーグレーズ国立公園(Everglades National Park)でプロペラ船を操るヒメネスさんは、「ここは素晴らしい場所です。世界に二つとありません」と言う。

 だが、米国最大の湿地帯である同地は、気候変動による脅威にさらされており、世界最大規模の包括的な環境保護の取り組みが行われている。

 2000種以上の動植物が生息・生育する亜熱帯性の自然の宝庫だが、最大の脅威は海からやってきている。

 エバーグレーズ地域は、フロリダ州南部のその他の地域と同様、土地がほぼ平たんだ。つまり、同地域の生態系は、気温上昇がもたらす深刻な影響である海面上昇に対して、きわめて脆弱(ぜいじゃく)だ。

 塩水が淡水の湿地に流れ込むと、破壊的な影響を及ぼしかねない。

 フロリダ州の人口約2100万人のうち900万人が、同地域で貯水・浄化される水に依存している。

 地下の帯水層は、いったん海水が浸透すれば、破壊されかねない。加えて、海水は、エバーグレーズ地域の希少な動植物の多くの生息・生育地を破壊する危険がある。

 干ばつの深刻化や降水量の減少など、気候変動がもたらすその他の影響についても、懸念が高まっている。

 NGOのエバーグレーズ財団(Everglades Foundation)の科学担当主任のスティーブ・デービス(Steve Davis)氏は、「広大な泥炭地が長い時間をかけて有機質土を蓄積する中、この生態系が土中に大量の炭素を閉じ込めてきました。この土壌が生息地の形成に寄与するのです」と説明する。

 淡水が失われると、炭素の隔離ができなくなるだけでなく、土壌中に蓄えられていた炭素が大気中に放出される。二重の気候災害だ。