【10月10日 People’s Daily】中国科学院天津工業生物技術研究所はこのほど、でんぷんの人工合成において重大な飛躍的進展を遂げ、国際的に初めて実験室で二酸化炭素(CO2)からでんぷんへのデノボ合成を実現した。この成果は北京時間9月24日、国際学術誌「サイエンス(Science)」のオンライン版で発表された。

「つまり、われわれが必要としているでんぷんは、CO2を原料とし、ビール醸造のようなプロセスを経て、生産現場で製造できるようになる」と、天津工業生物所の馬延和(Ma Yanhe)所長は述べた。

 でんぷんは人間の食糧の最も主要な成分であると同時に、重要な工業原料でもある。現在でんぷんは、主に農作物が光合成により太陽の光エネルギー、CO2、水を変換して作られている。

 研究者は長い間、光合成という生命プロセスを改善しようと努力してきた。CO2と光エネルギーの利用効率を高め、最終的にはでんぷんの生産効率を向上させようとしている。

 今回、天津工業生物所の研究者はCO2と電気分解から発生する水素を利用しでんぷんを合成する人工ルートの開拓に成功した。このルートは11ステップの核心的な生化学反応に関与し、でんぷんの合成速度はトウモロコシでんぷんの8.5倍にもなる。

 エネルギーの観点から見ると、光合成の本質は、太陽の光エネルギーをでんぷんに蓄積された化学エネルギーに変換することだ。そのため、光エネルギーを効率よく化学エネルギーに変換し貯蔵することが鍵となる。

 天津工業生物所の王欽宏(Wang Qinhong)副所長は以下のように述べた。「われわれは光エネルギー—電気エネルギー—化学エネルギーのエネルギー転換方式を考え出した。まず、太陽光発電は光エネルギーを電気エネルギーに変換し、太陽光発電の加水分解により水素を発生させる。そして、触媒によりCO2を水素から還元してメタノールを生成し、電気エネルギーをメタノールに蓄積された化学エネルギーに変換する。このプロセスのエネルギー変換効率は10%以上で、光合成のエネルギー利用効率をはるかに超えている」

 メタノールからでんぷんが合成されるような生命プロセスは自然界には存在しない。「このプロセスを人工的に実現するためには、自然界に本来存在しない酵素触媒の生成が鍵となる」と、王副所長は言った。

 研究者は動物、植物、微生物など31の異なる種から来た62の生体酵素触媒を発掘・改造し、最終的に10の最高の酵素を利用し段階的にメタノールをでんぷんに変換した。このルートからは、消化しやすいアミロペクチンだけでなく、消化・血糖の上がりが遅いアミロースも合成できる。

 研究チームの紹介によると、エネルギー供給が十分な条件の下で、現在の技術パラメーターから推定すると、理論的には1立方メートルサイズのバイオリアクターによる年間生産量は、トウモロコシ畑5ムー(約3300平方メートル)の年間平均生産量に相当する。

 馬所長は、「この成果はでんぷん生産の従来の農業栽培モデルから工業工場生産モデルへの転換を可能にし、またCO2原料の複雑な分子合成のための新しい技術の道を開拓した」と述べた。

 専門家は、将来、このシステムのプロセスコストを農業栽培ほどの経済的実行可能なレベルまで下げることができれば、耕地と淡水資源の90%以上の節約、農薬、化学肥料などによる環境への悪影響の回避、人間の食料安全レベルの向上、カーボンニュートラルな生物経済の発展を促進できると予想している。(c)People’s Daily/AFPBB News