【10月8日 AFP】数十億年前の火星で、水が地形形成にどのように作用したかを、火星の画像の分析によって明らかにしたとする研究論文が7日、発表された。古代生命の痕跡探索を導く手掛かりになるという。

 米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーシビアランス(Perseverance)」は2月、ジェゼロ(Jezero)クレーターに着陸した。大昔、クレーターには川があり、湖に流れ込んで扇形の三角州に土砂を堆積させていたと、科学者らは推測している。三角州は宇宙空間から確認できる。

 研究では、パーシビアランスが撮影した、かつてこの三角州の堆積層だった崖の高解像度画像を分析。論文は米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。崖の地層を調べることで、三角州の形成がどのようにして起きたかが明らかになる。

 NASAの宇宙生物学者エイミー・ウィリアムズ(Amy Williams)氏が主導する米フロリダ大学(University of Florida)の研究チームは、クレーター底面から確認できる崖の特徴と、地球の三角州に見られるパターンとの間に類似点を発見した。

 論文によると、最下部の三層の形状は、初期に安定した水の流れがあったことを示しており、約37億年前の火星が「水循環を支えるのに十分なほど温暖湿潤」だったことを示唆しているという。

 最上部の最も新しい地層には、直径1メートルあまりの角が取れた岩が散在している。おそらく、激しい洪水によって運ばれてきたと考えられる。

 だが、大昔に絶滅した生物の痕跡を探すためにサンプルを採取するのであれば、基底層の細粒堆積物がその対象となる可能性が高い。

 研究の成果は、火星生命体の貴重な「生命存在指標」を含む可能性のある土壌や岩石を採取するために、どこに探査車を送り込むべきかを判断する助けになるだろう。

 ウィリアムズ氏は、「周回軌道から撮影した画像から、三角州を形成したのは水でなければならないことが判明していました」と述べた上で、「しかし、今回の画像があるということは、本の表紙を眺めるだけではなく、中身を読むというようなことなのです」説明した。

 火星に生命が存在した可能性があるかどうかを明らかにすることは、パーシビアランス探査計画の主要任務となっている。(c)AFP/Natalie HANDEL