【10月6日 AFP】保守的なサウジアラビアの路上で自転車に乗るのは「絶対に無理」だと、サマル・ラフビーニ(Samar Rahbini)さん(23)はずっと考えていた──。長い間、女性のスポーツが良しとされてこなかったからだ。

 だが今は、紅海(Red Sea)沿岸の都市ジッダ(Jeddah)で男女混合の自転車スポーツクラブを主宰している。その名も「勇気(Courage)」。サウジアラビア王国で社会改革が進む中、根強く残る偏見をものともせずに活動を続けている。

「『勇気』という名前を選んだのは、私たちの行動には勇気が要るからです」とラフビーニさんはAFPに語った。「路上で走ったり、公衆の面前で練習したり」

 サウジの事実上の最高権力者ムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子が自由化への取り組みを始めたのは、2017年。それ以降、人々の反応はずっと穏やかになったとラフビーニさんは言う。

「以前はとても大変でした。スポーツをする女性、特に自転車に乗る女性を認めようとしない空気が社会にありましたから」とラフビーニさんは説明し、「にらみ付けられたり、動画を撮られたり、ぎょっとされたり。私たちが自転車に乗っていると、いったい何事だという反応を受けました」と当時を振り返った。

 以前は女性がスポーツをするのは不道徳だとか、破廉恥な行為につながると考える一部の保守的な人々の反感を買った。当局は今なお反対意見の封殺や活動家への弾圧を続けている。

 だが、社会改革の一環として、女性の自動車運転が解禁され、映画館も約35年ぶりにオープンし、男女が一緒にコンサートを鑑賞できるようになった。

 ジッダでは、自転車に乗っている女性の姿もかなり一般的になってきた。最近の市内走行では、ラフビーニさんと仲間は楽々と車を抜き去った。

 黒いトラックスーツに白いジャケットを着たラフビーニさんは、ヘルメットの下で髪をなびかせた。

「今では日常的に自転車に乗る女性がたくさんいるおかげで、当たり前になってきました」とラフビーニさんは言う。クラブには数百人の女性会員がいる。