【10月6日 AFP】アフガニスタン国立音楽院(Afghanistan National Institute of Music)の生徒や教師101人が3日、同国で実権を握ったイスラム主義組織タリバン(Taliban)による音楽への弾圧を恐れ、海外へ脱出した。同院の創設者で院長のアフマド・サルマスト(Ahmad Sarmast)氏がAFPに明らかにした。

 現在オーストラリア・メルボルン在住のサルマスト氏によると、生徒らは同日夜カタールの首都ドーハに到着した。この後、ポルトガル政府の支援を受け同国へ向かうという。

 一行の約半数が女性や少女で、女性だけの交響楽団「ゾラ(Zohra)」の楽団員も含まれている。

 アフガニスタンの首都カブールでは、カタール大使館の協力を得て少人数に分かれて空港まで移動した。最初の難関は、空港を占拠するタリバン戦闘員がビザ(査証)を疑ったことだったが、カタール大使館職員が間に入ってくれた。その後、臨時公用旅券では女性は出国できないと言われたが、再び大使館員が交渉してくれた。

 飛行機がついに離陸すると感極まったとサルマスト氏は話す。「涙が止まらなかった。泣き続けていた。家族も一緒に泣いていた。人生で最も幸せな瞬間だった」

 タリバンがアフガニスタンを統治していた1996年から2001年まで、歌や踊りを含めあらゆる娯楽が禁止されていた。

 今回の統治は20年前より穏健なものになるとタリバンは約束している。一方で、自分たちが解釈したシャリア(イスラム法)の枠内で国家を運営していく考えを示している。

 だが、音楽に対する姿勢は一貫しておらず、明確な命令は発せられていない。

 例えばカブール郊外で週末行われたタリバンの集会では、閣僚や幹部の演説前に宗教音楽が流された。

 サルマスト氏によると、タリバンは音楽院関係者に対し追って通知があるまで自宅待機するよう命じたが、2か月近くが過ぎても通知はこなかった。

 サルマスト氏はカブールからの脱出は第1段階にすぎないと語った。卒業生や退職者を含めアフガニスタン国内に残っている音楽院関係者184人全員が避難し、脱出組と再会するまで手を尽くすと誓っている。

 先月AFPが音楽院の校舎を訪れた際には、音楽は聞こえてこなかった。ト音記号が描かれた木がある中庭では、カラシニコフ(Kalashnikov)銃を抱えたタリバン戦闘員が雑談をしていた。(c)AFP/David WILLIAMS