【10月15日 AFP】アフガニスタンのバーミヤン(Bamiyan)渓谷では、少数民族の人々が山腹の洞窟に住み、なんとか食いつないできた。しかし、イスラム主義組織タリバン(Taliban)に一帯が制圧されて以降、飢えに苦しみ、おびえながら暮らしている。

 バーミヤンは、アフガニスタンで最も美しい地方の一つとして知られる。起伏に富んだ渓谷にある洞窟群では数百世帯が暮らしている。洞窟は、5世紀に仏教の僧侶が砂岩の絶壁をくりぬいて造ったものだ。数キロ先には、5~6世紀ごろに断崖に彫られた有名な大仏像があったが、20年前、当時政権を握っていたタリバンによってダイナマイトで爆破された。

 地域の住民は、国内ではもともと最貧困層だったが、8月にタリバンがアフガニスタンを制圧してからは国際援助が途切れ、食料品が値上がりして失業者も急増し、さらに苦境に追いやられている。

 洞窟に暮らすファティマさん(55)は、1年半前の豪雨で洞窟が一部、崩落したため、わずか6平方メートルほどしかない狭い洞窟の中で家族4人で生活している。「今夜は食事なしです。もうじき冬が来ますが、暖を取るものは何もありません」と話す。

 以前は日雇い労働や荷物を運搬する仕事で糊口(ここう)をしのいでいたが、その収入も途絶えた。

 れんが職人のマフラムさん(42)一家は、子どもたちにジャガイモの収穫作業を手伝わせて食いつないでいる。

「子どもたちは、農家から賃金の代わりにジャガイモをもらってきます」とマフラムさんは言う。「食事はそれだけです。あとは、パンがほんの少し」

 住民の大半と同じく、ファティマさんとマフラムさんの一家は少数民族のハザラ人(Hazara)だ。イスラム教シーア派(Shiite)が多く、アフガニスタンでは何世紀にもわたり迫害を受けてきた。

 スンニ派(Sunni)の強硬路線をとるタリバンはハザラ人を異教徒と見なしているため、人々の間に恐怖が広がっている。

 5人の子どもの母親アメナさん(40)は、「とても怖いです」と訴える。

 地元自治体の副首長、サイフッラー・アリア(Saifullah Aria)氏(25)は、状況は悲惨だと語る。

 アリア氏は、今までこの渓谷にやって来たNGO団体は見たことがないと話した。バーミヤン当局に支援を訴えているが、いまだに回答はないという。

「じきに冬が来れば、一番弱い人たちは死んでしまいます。それは確かです」とアリア氏は言った。(c)AFP/Michel MOUTOT