【10月10日 AFP】「ヒューマンライブラリー(Human Library)」は、自分の人生について語ってくれる人を「借りる」ことができる図書館だ。このコンセプトは北欧デンマークで生まれ、以来70か国以上に広まっている。

 9月のある日、デンマークの首都コペンハーゲンのヒューマンライブラリーでは、8人の「本」が貸し出し可能だった。このうちの一人のイベンさん(46)は、性的虐待の被害者で、精神的な問題を抱えている物静かな女性だった。

「本」を借りると、30分間、一対一あるいは少人数でどんな質問もできる。

「ヒューマンライブラリーは安全な空間です。ここで多様性を育み、人はそれぞれ違うことを知り、通常は出会う機会がない人々と関われます」とプロジェクトの創始者、ロニー・アバゲール(Ronni Abergel)氏は語る。「自分の中にある無意識の偏見を見つめ直すこともできます」

 アバゲール氏がヒューマンライブラリーを始めたのは2000年。ロスキレ(Roskilde)での、北欧最大級の音楽フェスティバルの場だった。その後、非営利団体を設立した。

「読書はまさに対話です」とアバゲール氏は言う。

「こちらから数分かけて自分のテーマや経歴を説明し、どんな質問でもどうぞと伝えます。エイズウイルス(HIV)陽性であること、障害があること、またはトランスジェンダーであること。難民やユダヤ人、イスラム教徒であることなどについて。テーマは何でも構いません」

 ほとんどの場合、会話は自由に展開する。開催場所は通常、市立図書館のような落ち着いた環境や会議室で、この日は、ヒューマンライブラリーの敷地内の庭だった。

「質問攻めで、会話が弾む時もあります。私から少し多めに話し、読者に問い掛けてじっくり考えてもらい、新たな質問を引き出すこともあります」とアナス・フランツェン(Anders Fransen)さん(36)は説明した。盲目で聴覚障害がある「本」だ。