■文化の横取り

「ファブリカ・ソシアル」ブランドの下、シナカンタンの女性たちの他、メキシコ国内の6州の作り手たちが作業環境の改善や、ビジネス上の不平等をなくすために努力している。

 中庭に椅子と机を並べて座った女性たちの前で、グレミオンさんが経費や支出など、取引の基本的な事柄の見直しを始める。目指すのはフェアトレード、つまり公正な取引。非常に重要だが、難しい目標だ。

 作り手たちは熱心に耳を傾け、製作に必要な時間、自分たちのニーズ、そして適切な価格設定の方法について話し合う。

 先住民のテキスタイルは、金銭的な価値にとどまらず、文化的・歴史的な遺産でもある。だが、世界的なファッションブランドはこぞってそれを許可なく使用してきた。

 大手ブランドによる先住民の文化遺産の流用の背景には、グローバル企業とローカルな作り手の間に存在する力の不均衡がある。デ・ラ・ロサさんは、これを古い植民地支配のなごりだと言う。「私たちは今も完全に、植民地的な経済システムの中に生きています」

 立ち上げ時からプロジェクトに参加しているペレスさんのいとこは「とても良くできているし、心が込もっているし、メキシコ産の素材でできています。私たちの仕事を認めてほしいです」と語った。(c)AFP/Jean Luis Arce