【10月13日 AFP】米フロリダ州中部の研究所にある海水の大きな水槽。人工太陽照明灯の下、生物学者のアーロン・ギャビン(Aaron Gavin)氏はその中で生きている700株以上のサンゴに、小エビを原料とする飼料をピペットで丁寧に与える。

 ここ「フロリダサンゴ救助センター(Florida Coral Rescue Center)」での取り組みは、米本土水域にある唯一のサンゴ礁を謎の病気から救う最後の頼みの綱かもしれない。

 ギャビン氏のチームはこの水槽の中に、フロリダ州南端沖のサンゴの生息地を丹念に再現した。潮の流れを人工で起こし、魚も現地から取り寄せた。

 チームはこの海域で、原因不明のイシサンゴ組織喪失病(Stony Coral Tissue Loss DiseaseSCTLD)という病気に侵されている18種のサンゴを救おうとしている。

 フロリダキーズ諸島(Florida Keys)沖の大西洋には、マングローブの林が広がり、魚の群れが素早く泳ぎ回っている。だが、その中に横たわるサンゴは白く脱色し、海底に大きなまだらをつくっている。

 SCTLDは2014年、マイアミの近くで初めて確認された。その後、急速に広がり続け、海の生物多様性の要であるイシサンゴの約半分を死滅させた。現在、この海域のイシサンゴ45種のうち20種超が絶滅の危機にひんしている。

 この病気はさらにカリブ海(Caribbean Sea)を渡り、中米メキシコやベリーズのサンゴにまで被害を及ぼしている。

 ギャビン氏のチームの取り組みは、2018年に米海洋大気局(NOAA)とフロリダ魚類野生生物保護委員会(Florida Fish and Wildlife Conservation Commission)が立ち上げた海洋生物保護プロジェクトの一環だ。