コロナ規則違反で逮捕装う 誘拐殺人の英警官に仮釈放なしの終身刑
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【9月30日 AFP】(更新)英ロンドンで今年3月、帰宅途中に行方不明になった女性が遺体で発見され、現職の警察官が逮捕・起訴された事件で、裁判所は30日、この警察官に対し、誘拐、強姦(ごうかん)、殺人の罪で、異例となる仮釈放なしの終身刑を言い渡した。
前日の公判では、被告が新型コロナウイルス規制違反を理由に被害者の女性を逮捕したと見せ掛けて誘拐し、性的暴行の上殺害したことが明らかになっていた。
新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)中に起きたサラ・エバラード(Sarah Everard)さん(33)の事件は、英国史上最も注目を集めた行方不明事件の一つとなり、外出時の女性の身の安全をめぐる議論に発展。抗議デモも相次いでいた。
エバラードさんは、ロンドン南部クラパム(Clapham)にある友人宅を訪れた帰りに行方不明になり、首を絞められて殺害された。遺体は焼かれ、1週間後に森林の中で見つかった。
事件当時ロンドン警視庁(Metropolitan Police Service)のエリート部門である外交保護部に所属していたウェイン・カズンズ(Wayne Couzens)被告(48)は、エバラードさんを誘拐、レイプ、殺害した罪を7月に認めた。被告は既婚者で、子どもが2人いる。
ロンドンの中央刑事裁判所(Old Bailey)で開かれた判決公判で、トム・リトル(Tom Little)検察官は、カズンズ被告が3月3日、米大使館での勤務を終えた後に被害者を誘拐したと述べた。犯行時は非番だったが、警察官のベルトを着用していたという。
検察によると、被告はエバラードさんに「身分証を提示して手錠を掛ける」ことで「逮捕したと偽り」、車に乗せて誘拐した。車は「一人で出歩いている女性を誘拐し、レイプする目的」で借りたものだった。
被告が警察の身分証を掲げたり、エバラードさんに手錠を掛けて車に乗せたりする様子は、監視カメラが捉えていた。また、車で現場を通り掛かったカップルもその様子を目撃していたが、覆面警察官が容疑者を逮捕しているのだと思い込んだという。
リトル検察官によれば、被告はロックダウン規制違反の取り締まりに関する知識と経験を悪用し、どういった言葉を用いれば効果的かを理解していた。
被告はエバラードさんに手錠を掛けた3分後には、車でイングランド南東部沿岸のドーバー(Dover)に向かった。そこで自分の車に乗り換え、人けのない郊外に移動してエバラードさんを暴行。殺害には警察官のベルトを使ったと精神科医に供述している。
エバラードさんについて、親しかった知人は「情報通で世慣れた」女性で、力ずくやだまされでもしない限り知らない人物の車に乗ることはないはずだと話したという。検察官は、「被害者はロックダウン中に友人宅を訪れて夕食を取っていたことから、新型コロナ規則に何らかの形で違反したと非難されることに対して弱い立場にあり、違反の指摘を甘んじて受け入れがちな状況にあった」と説明した。(c)AFP