【9月30日 AFP】デンマークの美術館が、芸術家の男性に900万円以上相当の紙幣を使って自身の過去作を再現するように委嘱したところ、男性により紙幣を横領され、代わりに「金を持ち逃げ」と題した白紙のキャンバスを送り付けられてしまった。

 北部オールボー(Aalborg)のクンステン美術館(Kunsten Museum)は芸術家のイエンス・ハーニング(Jens Haaning)さん(56)に、デンマークとオーストリアの平均年収である53万4000クローネ(約930万円)の現金を使い、過去作二つを再現するように依頼。しかし、同美術館のラッセ・アンダーソン(Lasse Andersson)館長がAFPに語ったところによると、展覧会開催2日前にハーニングさんからメールが届き、約束していた作品は展示しないと伝えられた。

 ハーニングさんは宣言通り、2枚の真っ白なキャンバスを送ってきた。アンダーソン館長はそれを見て声を出して笑い、今月24日から開かれている現代美術展で作品を展示することにしたという。同館長は、この作品には「ユーモア」があり、「私たちが仕事にどのような価値を置くのかを反映している」と評価している。

 ハーニングさんはメディア向けの発表で、現金を返済しない理由として、「このアート作品の本質は、芸術家の労働条件をめぐるものだ」と説明。「この作品はまた、私たちが自分の属している社会構造を疑う義務があることも示している。その構造が全くもって理不尽なものであれば、それを打破しなければならない」と主張した。

 アンダーソン館長は今のところこのユーモアを解しているが、展覧会が終われば話は別かもしれない。館長は、合意通り来年1月16日までに現金が返済されなかった場合、「ハーニングさんに契約を順守させるために必要な措置を取る」と語った。

 ハーニングさんは当初の委嘱料として1万クローネ(約17万円)と展示ボーナスを受け取っている。(c)AFP