■「そのページはまだ書かれていない」

 アバゲール氏は、「難しい質問」もしてみてほしいと話す。どんなにセンシティブなテーマでも制限を設けないという。

 イベンさんが生きた「本」として語るテーマは三つ。性的虐待を受けた経験、境界性人格障害、または重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えて生きることについてだ。読者は、この中から一つを選べる。

 時には回答を拒否することもあった。「そのページはまだ書かれていないと言ったら、みんな笑って、いいよと言ってくれました」とイベンさんは振り返った。

「本」になって4年間、嫌な思いをしたことは一度もないという。

「『本』になれるのはありがたいことです。自分を省みることができます」と語る。

 フランツェンさんは、自分の話が障害について考えるきっかけになっていることを誇りに思っている。

 最近、中学生に「貸し出された」後、会話が聞こえてきた。「『この人、すごい。すごい話だよね』って。子どもたちの心に響くものがあったんですね」と笑みを浮かべた。