【9月29日 CNS】1600年余りの歴史を持つ甘粛省(Gansu)馬蹄寺石窟群はこのほど、文化財デジタル化プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトの担当者によると、近距離撮影、3次元レーザースキャン、3次元再建、360度パノラマなどの技術を加えた後、この千年の古刹の石窟群はデジタルにより生まれ変わり、観光客はオンライン上で「実際の風景見学」を行うことができるようになった。

 馬蹄寺石窟群は東晋時代に建設され、その名は「天馬が下界に下り、ひづめの跡がこの地に残っている」ことに由来すると伝えられ、金塔寺、千仏洞、南馬蹄寺、北馬蹄寺、上観音洞、下観音洞計70余りの石窟群を含む。歴史上幾度の戦火を経て、多くの場所が壊された。ここ数年、現地政府が修繕に力を入れているが、石窟群は中国西北部の祁連山区に位置し、重要な壁画、彫刻は山体の内部に閉ざされており、冬の厳寒、夏の多湿の気候条件と塩分の高い岩盤、細菌の多い地質的要因により、石窟群が風化、アルカリのリスクに直面している。

 甘粛省張掖市(Zhangye)文物保護研究所弁公室責任者の張志勇(Zhang Zhiyong)氏は、文化財のデジタル化が馬蹄寺石窟群のような動かせない文化財の保存と利用の難題を解決した。石窟群の代表格である三十三天石窟は、城壁の内部にあり、一人しか通れない傾斜70度以上の石段を登ることでしかたどりつけないが、デジタル化すれば「窟内の文化財を窟外で見ること」が可能になり、手間を省くことができる。

 実は近年、文化財のデジタル化は中国の文化財保護の大きなトレンドとなっており、多くの業界関係者や学者が政府に献策を提言したことがある。今年初め、中国敦煌研究院(Dunhuang Academy)の蘇伯民(Su Bomin)副院長は特に「文化財保護にデジタル化と技術の翼をつけよう」と提案し、敦煌莫高窟のデジタル化の経験を積極的に紹介した。莫高窟では現在、観光客がスマホのカメラを使えば、周辺の風景を自動認識することができ、仮想のオブジェがスマホの画面に鮮やかに映し出される。

 デジタル技術は国際的にも目覚ましい成果を挙げている。2001年、唐の高僧玄奘(Xuan Zang)と法顕(Fa Xian)の記録したアフガニスタンのバーミヤン大仏がタリバン政権の爆撃で破壊され、世界が嘆息した。14年ぶりに中国のある夫婦率いるチームがバーミヤン大仏の跡地を訪れ、精密な計測とマッピングを行い、ホログラフィ技術を利用しバーミヤン大仏を再び「立ち上げる」ことに成功した。

 中国の業界関係者によると、航空撮影、傾斜撮影、3D立体レーザースキャンなどの新技術により、文化遺産のデジタルコンテンツ収集のための強力な技術基盤ができたという。収集されたデジタル情報は、デジタル写真、3次元モデルデータ、720度パノラマ画像、VRビデオなど多様な形式のデジタルコンテンツとして表現することができ、人々と文化遺跡との間の距離をより身近にし、より深い理解の促進が可能になる。デジタル情報があれば、多くの遺跡が長年関与してきた修復や管理などの問題も「よりどころとする根拠」を得られるだろう。

 注目すべきは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を背景に、文化財のデジタル化が新たな応用の方向を示していることだ。コロナ禍の影響でオフラインでの展示が困難な博物館は、デジタル技術で「クラウド展示」を開催し、安全性を確保しながら、展示を続けることができる。(c)CNS/JCM/AFPBB News