【9月26日 AFP】英イングランド北西部マンチェスターの商業ビル最上階の一角に店を構えているのは、同国最後のカセットテープ専門店「マーズ・テープス(Mars Tapes)」だ。

 市内を走る路面電車の車両より小さな店内には、カセットテープ約1000本の他、大型ラジオカセットプレーヤー、ヘッドホンステレオ「ウォークマン(Walkman)」のビンテージモデルなど、カセットに関連する品々が所狭しと置かれている。「コカ・コーラ(Coca-Cola)」のロゴ入りラジオもある。

 エルビス・プレスリー(Elvis Presley)、フローレンス・アンド・ザ・マシーン(Florence and The Machine)、ルイス・キャパルディ(Lewis Capaldi)らスターのヒット作品が棚にずらりと並び、バックグラウンドに流れる昔の曲が客を懐かしい世界へといざなう。

「マーズ・テープス」の共同設立者、イタリア人のジョルジョ・カルボーネ(Giorgio Carbone)氏(30)は、さまざまな背景を持つ音楽好きが集まり、2019年にこの店が立ち上げられたと語った。メンバーには音響技師や、ジャーナリスト/ミュージシャンもいる。

■懐かしさ

 新型コロナウイルスの流行でレトロ文化への消費者の関心が高まる中、「マーズ・テープス」はその波にうまく乗っている。

 ロックダウンの期間中、人々は退屈しのぎと現実逃避の手段として、読書に加えて古典映画やテレビの連続番組に気晴らしを求めた。

 カセット以前の音楽の販売形態はレコードだった。レコードは昨年、英国での売り上げが1990年代以来の最高水準に達した。

 レディー・ガガ(Lady Gaga)やデュア・リパ(Dua Lipa)、セレーナ・ゴメス(Selena Gomez)といった現代のアーティストが最近になってカセットテープで曲をリリースし、英国のカセットの売り上げは2020年に15万7000本前後まで増えた。これは2003年以降で最高の数字だ。