■月収13万円でもぜいたくな暮らし

 ティティサン容疑者の逮捕後、そのぜいたくな暮らしぶりと著名人との交友関係が明らかになっている。

 捜査関係者は地元メディアに対し、首都バンコクの高級マンションの他、高級スポーツカー42台を所有していると語った。1台150万ドル(約1億6000万円)のランボルギーニ・アヴェンタドール(Lamborghini Aventador)も含まれていた。個人資産は1800万ドル(約20億円)に上るという。

 反汚職活動家のシースワン・ジャンヤー(Srisuwan Janya)氏はAFPに、資金洗浄防止当局にティティサン容疑者の資産を調査するよう要請していると語った。

 シースワン氏は、「月収4万バーツ(約13万円)の男が、高級車などを40台近く所有するのは不可能だ」と話した。

 2014年にクーデターにより政権の座に就いたプラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相は、汚職の根絶を公約している。

「フェラーリのジョー」事件により、それから7年たった今も、警察の腐敗が一向に是正されていないことが浮き彫りになった。

 チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)のティティナン・ポンスティラック(Thitinan Pongsudhirak)教授は、上部とコネを持つやからは守られており、警察改革は「大失敗」に終わっていると指摘する。告発者は罰せられるか黙らされるという。

 市民は警察を信頼していない。バイクタクシーの運転手や屋台の店主、麻薬密売人に至るまで、合法・非合法にかかわらず何らかの商売をしている人はほぼ全員、地元の警官に賄賂を贈らなければ営業できない仕組みになっている。

 汚職・腐敗を監視する国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」が2020年11月に公表した調査によると、過去1年に警察に賄賂を贈ったことがあるタイ人は調査対象の半数近くに上った。

 タイ経済は新型コロナウイルスの流行を受けて危機に直面。これに伴い、新型ウイルス関連の規則を執行する権限を拡大した警察の腐敗も深刻化している。

 同NGOによる各国の公的部門の腐敗度ランキング「腐敗認識指数」でタイは現在、180国・地域中、104位となっている。(c)AFP/Pathom Sangwongwanich and Sophie Deviller