【9月27日 AFP】高級スポーツカー好きの派手な警官が、容疑者を陰惨な方法で尋問している映像が流出し、栄華から転落する──。これは大ヒット映画の筋書きではなく、タイで数週間前に実際に起こった事件だ。事件をきっかけに、社会のほぼあらゆる層が長年影響を受けてきた警察の汚職問題が改めて注目され、改革を求める声が高まっている。

 地方の警察署長だったティティサン・ウッタナポン(Thitisan Utthanaphon)容疑者(41)は、豪勢な暮らしぶりからニックネームのジョーにちなみ、「フェラーリのジョー(Joe Ferrari)」の名で知られていた。

 しかし、麻薬密売容疑が掛けられていた男の頭にプラスチック袋6枚をかぶせて窒息死させた映像が流出し、殺人や職権乱用などの疑いが持たれている。男から、6万ドル(約660万円)を脅し取ろうとしていたと伝えられている。

 事件は当初、秘密裏に処理され、容疑者の男はアンフェタミン(覚せい剤の一種)の過剰摂取により死亡したとされたが、ある弁護士が実際は窒息死させられたことをフェイスブック(Facebook)で暴露し、事件が発覚した。

 だが、汚職の温床となっている有力者のネットワークに保護されているティティサン容疑者は、テレビ司会者である恋人の父親が署長を務める近県の警察署に異動となっただけだった。

 しかし、別の弁護士シットラー・ビアバンクート(Sittra Biabungkerd)氏が、警察内部から提供された映像を公開。そこには手錠を掛けられた容疑者の男を複数の警官が押さえ込み、ティティサン容疑者が男を窒息死させる様子が映っていた。

 映像がネットで拡散したため、警察はティティサン容疑者らを逮捕せざるを得なくなった。同容疑者は全ての容疑を否認している。

 シットラー氏はAFPに対し、警官が協力し合って殺害の事実をもみ消そうとするのを止めたかったと話した。「今どき、容疑者の取り調べに黒いプラスチック袋なんて使っていないだろうと思う人も多いだろう」とし、「だが、この事件でまだそのようなことが秘密裏に行われていると明らかになった」と指摘した。