【9月25日 AFP】中国は、ミャンマー軍事政権に新型コロナウイルスワクチンを提供する一方、政権と敵対する反政府武装勢力にもワクチンを支援している。双方に協力の手を差し伸べることで、混迷を深めるミャンマーでの影響力を拡大する狙いがある。

 ミャンマー国軍が今年2月、クーデターでアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問率いる政権から実権を奪って以来、国内の医療体制は混乱状態に陥っている。

 中国政府はこれまでに、軍事政権に約1300万回分のワクチンを提供した。

 軍事政権は感染拡大に歯止めをかけられずにいる。新型ウイルスを完全に封じ込める「ゼロコロナ」を目指す中国としては、2000キロにわたり国境を接するミャンマーからの新型ウイルス流入を警戒している。

 反政府勢力メンバーがAFPに語ったところによれば、中国政府はワクチンや医療要員、隔離施設用の資材を目立たないように提供している。

 ヒスイの産地として知られるミャンマー北部を支配する少数民族武装勢力「カチン独立軍(KIA)」の報道担当者は、中国赤十字(Red Cross)の職員が新型ウイルスの感染拡大抑制を支援するため時々やって来ると話した。

 ミャンマーには、主に国境周辺地帯を支配する少数民族武装勢力が20以上ある。武装勢力は麻薬売買や天然資源、自治をめぐり、武装勢力同士だけではなく国軍とも対立してきた。

 だが、武装勢力、国軍いずれも新型コロナに対しては脆弱(ぜいじゃく)だ。

 KIAの報道担当者によると、ミャンマーが感染の第3波に見舞われた7月、KIAは拠点とするカチン州ライザ(Laiza)で1万人に中国製ワクチンを接種した。中国から医療要員が派遣され、マスクや手指消毒薬も配布されたという。

 他の少数民族武装勢力「シャン州進歩党(SSPP)」や「タアン民族解放軍(TNLA)」も中国から支援を受けたとAFPに語った。

 一方、国境の町ムセ(Muse)では、中国との取引再開を目指す貿易関係者向けに1000床の隔離施設の建設が進められている。現場で働いているのはミャンマー人だが、建設資材は全て中国雲南(Yunnnan)省当局が提供していることが、AFPの取材で分かった。