■他と違う何か

 だがカセットテープブームは、若き日を懐かしむ年配世代の間だけで起きているわけではない。

 若い世代でも、何も考えずにオンラインでプレーリストを飛ばし聴いたり、ソーシャルメディアを際限なくスクロールしたりするよりも、音楽をじっくり味わいたいという人が増えている。

 カルボーネ氏は、人は物を所有することが好きで、また特にコロナ流行下ではカセットが音楽をより楽しむ一つの方法となっていると指摘する。

「カセットには、することがたくさん隠れています。私たちが時代とともになくしたものです。私たちの持っているものを味わい、飛ばしたりせずに何度も聞くといったことです」

 介護アシスタントのジェーン・フィールディング(Jane Fielding)さん(22)は、時々ヘッドホンステレオでカセットを聞くと言う。「単純さが好きなんです。(中略)じゃまが入らないし、スマホのような通知もありません」

 ほとんどのカセットテープは10ポンド(約1500円)以下で、限定版の商品では50ポンド(約7500円)程度になる。

 カルボーネ氏は、カセットは「ニッチ」市場にとどまりつつも、安定した需要が続くとみている。「カセットの音には他とは違う何かがあるのです」

 店内を物色していた客のジョン・イェーツ(John Yates)さん(45)もうなずく。

「カセットだと音が良いのです。ラジオで聞くのとかなり違います。(中略)別の次元なんですよ」 (c)AFP/Imran Marashli