■連鎖反応のプロセス

 長らく気候変動には懐疑的だったウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は近年、方向を転換した。ロシアの炭素排出量を2050年までに、欧州連合(EU)のレベル以下に削減する計画を策定するよう政府に命じている。

 シベリアで山火事が猛威を振るった今夏、大統領は「まさに未曽有の」自然災害の連続に危機を覚えると語った。

 砕氷船に搭乗していたベテラン極地探検家ビクトル・ボヤルスキー(Viktor Boyarsky)氏(70)は、人間の活動が温暖化の重要な原因ではないと主張する。

 ロシアの北極南極博物館(Arctic and Antarctic Museum)の館長を務めていたボヤルスキー氏は、表層結氷が後退することで、大西洋の温かい海水が流入すると言う。「連鎖反応のプロセスだ。氷が減ると、海水が増えて温度も上がる」

■「私たちはただの客」

 ロブソフ船長によると、北極は氷が薄くなっただけでなく、夏場には霧に包まれるという。「これも温暖化の影響だと思う。湿度が上がっている」と語る。

 さらに、190以上の島からなるフランツヨシフ諸島(Franz Josef Land)などで、北極圏の氷河が縮小しているのを目にしてきたという。

「多くの氷河が、地図に示されている位置から島の中心部に向かって後退している」とし、「間違いなく、暑さのせいだ」と話した。

「50年の勝利」号は、ロシアの国営エネルギー企業ロスアトム(Rosatom)が運営する砕氷船団の一隻で、北極点に59回到達している。今回の航海には、海外旅行が賞品のコンテストに勝った10代の若者グループも乗船していた。

 全長160メートルの同船がフランツヨシフ諸島のゲオルグ島(Prince George Land)沖を通過した時、1頭のホッキョクグマが船を見ながら氷の上を歩いていた。

「ここはクマが仕切っている。ここがすみかなんだ」と船長は言う。「私たちはただの客だ」

 映像は8月15~22日撮影。一部の映像はロスアトムより提供。(c)AFP/Ekaterina ANISIMOVA