【9月17日 東方新報】新型コロナウイルスが猛威をふるう中、在日中国人のボランティアグループが日本各地で活動している。新型コロナウイルスに感染した日本国内の同胞を救おうと、これまでに525人の感染者を支援。重症者も死者もゼロで、全員が回復か回復途上にある。孤立しがちな異国での生活、医療体制の違いや言葉の問題で治療のハードルが高いという現状を、団結の力で乗り越えている。

 日本で1人暮らしをしている趙松岩(Zhao Songyan)さん(26)は8月下旬に新型コロナウイルスに感染した。最初は軽いせき程度だったが、次第に高熱が出始め、嗅覚や味覚の喪失、全身の痛み、喀血(かっけつ)など病状は急速に悪化した。趙さんは恐怖心と孤独感で「遺書を書こう」と何度も思ったほどだった。9月4日には呼吸困難に陥り、血中酸素濃度が83まで低下。その時、趙さんの友人を通じて連絡を受けたボランティアグループの創始者、劉勇(Liu Yong)さんが仲間とすぐに緊急支援チームを編成し、酸素ボンベ7本を送り届けた。そして入院をためらう趙さんを説得し、翌日には病院に入院した。趙さんは順調に回復した。

 劉さんは昨年春、日本在住の仲間と新型コロナウイルスについて情報交換をしようと、中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」にグループチャットを立ち上げた。友人たちに募金も呼びかけて100万円以上を集まると、酸素ボンベや動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定するパルスオキシメーターなどを購入。感染した同胞に無償で提供した。

 この活動が知れ渡るとボランティアは続々と集まり、安徽医科大学(Anhui Medical University)第二付属病院放射線科の趙紅(Zhao Hong)主任医師など呼吸器系の専門家3人もグループチャットに参加。無償で医学的指導を始めた。グループチャットには1万人近くが参加しており、年齢も職業も住所も異なる人々が「同胞を助けたい」と同じ思いで一つになっている。

 この夏で日本のコロナ禍は第5波に突入し、在日中国人の感染者も日に日に増加した。劉さんの携帯電話には救援を求める連絡が絶え間なく入り、寝る間もない状態になった。活動範囲を効率的に継続するため、劉さんはボランティアを「受付相談」「医療通訳」「物資管理・郵送」「緊急救援」などのチームに編成した。微信のミニプログラムを開発し、患者の病状を随時把握できる仕組みを作り、保健所との交渉、酸素ボンベの供給など患者の個別事情に合わせた支援を行うようにした。

 埼玉県川口市に住む女性(48)は非常に危険な病状だったが、病院と連絡が取れない状況が続いた。ボランティアはすぐに5人編成の緊急支援チームを立ち上げ、30分以内に酸素ボンベ27本を送り届け、2時間後には救急車を呼ぶことができた。

 ただ、これほどの活動をしても、その努力を理解しない人もいる。「劉勇がこんなことをするのは自分の存在感をアピールするためだ」「劉勇は酸素吸入器を20万円もの高値で患者に売りつけている」などのデマが飛び交った。一銭たりとも対価を受け取っていない劉さんの心は傷つき、「もうやめようか」と何度も思ったという。しかし、今も救援を待つ人たちがいることを思い、「ここで放り出すわけにはいかない」と自らを奮い立たせている。

 来日して15年の恵子さんは一家全員が感染し、友人を通じて劉さんの「助け合いグループ」に加入。専門家の指導で、一家全員が回復に向かった。恵子さんはボランティアたちを尊敬すると同時に心配もしている。無償で深夜まで救援活動を続けているのに、グループに好感を持たない人たちからは嘲笑や皮肉の言葉を浴びているためだ。そんな人たちの存在に、恵子さんは「中国人は団結しないなんて誰が言っているの? 私が真っ先に『違う』と言ってあげる」という思いにかられる。「思いやりは広がるもの、愛も伝わるもの」。コロナ禍と闘う経験を通じて、在日中国人はもっと団結できるようになると恵子さんは信じている。

 劉さんは「日本在住の中国人には公益的組織が欠けている。皆の思いやりを一つにまとめる必要がある」と考えている。コロナ禍が収束した後、支援が必要な在日同胞を助ける公益財団法人の設立を計画している。法人名は中国の象徴・竜にちなみ、「竜組(チームドラゴン)」と名付けたいという。(c)東方新報/AFPBB News