【9月19日 AFP】巨大なロシアの原子力砕氷船が凍り付いた北極海を突き進み、北極点(North Pole)への航路を切り開く。見渡す限り真っ白な世界。だが、ここでも気候変動の影響がうかがえる。

「1990年代や2000年代初期には、氷はもっと手ごわく、分厚かった」と、砕氷船の船長を務めるドミトリー・ロブソフ(Dmitry Lobusov)氏(57)は語る。30年近い船乗り生活の多くの時間を、北極圏で過ごしてきた。

 昔は何年も融解しない氷がかなりあったが、「そんな氷も、今ではめったに目にしない」と話す。

 ロブソフ氏の「50年の勝利(50 Let Pobedy)」号は、ロシアが増強中の大型原子力砕氷船団に属している。船団は、北極圏において、ロシアの力を誇示する役割も果たしている。

 砕氷船は氷結した海で商船を先導し、ロシアの原油や天然ガス、鉱物資源を世界中に輸送させる。ロシアは、アジアと欧州を結ぶ「北極海航路」を定着させる方針で、同航路をスエズ運河(Suez Canal)経由の南周り航路に匹敵する航路だと主張している。

 塩分を押し出しながら数年がかりで形成される多年氷は、より厚く強固になるとロブソフ氏は説明する。そのため、砕氷船で航路を切り開くのに苦労するという。だが今日では、ほとんどの表層結氷はその年に形成され、夏になるとすぐに融解するという。

■融解する表層結氷

 これが気候変動の影響であることは間違いないというのが、科学者の見解だ。

 ロシア水文気象環境監視局(Rosgidromet)の3月の報告によると、北極の表層結氷の厚さは現在、1980年代の5分の1~7分の1だ。夏季に氷が張らない海面も年々増えているという。

 2020年9月のロシア北極圏での表層結氷の面積は、同時期では過去最低の2万6000平方キロまで縮小している。

 さらに、国土の3分の1が北極圏内にあるロシアは1976年以来、気温が10年に0.5度の割合で上昇。地球全体の平均より速いペースだという。