【9月17日 AFP】貯水タンクや消防車、さらにはヘリコプター。米カリフォルニア州ナパバレー(Napa Valley)のワイン製造者は、所有地や高価なワインを山火事から守るために消火設備を自前で買い求めている。

 地球温暖化の影響を受けた記録的な干ばつにより、米国西部では広大な地域が乾燥し、火災が極めて起きやすくなっている。カリフォルニア州中部に点在する世界的に名高いブドウ畑も例外ではない。この地域では、年間数十億ドル(数千億円)相当のワインを生産している。

 火災が驚異的な速さで広がる中、2021年は山火事被害が最悪の年になりつつあり、消火活動も手薄だ。

「カリフォルニア州森林保護・防火局(Cal Fire)があちこちで同時に活動できないことは承知している。ここだけではなく、カリフォルニア州の他の所でもずっとできていない」と地元のワイン製造者、ランディ・ダン(Randy Dunn)さんは語る。1979年に80ヘクタールのワイナリーを開業した。

 だが、「何らかの対策を備えてここにとどまれば、チャンスはある。避難すれば、そのチャンスもなくなる」と語る。

 ダンさんは、まだ動く1946年型の消防車を持っているが、最近、1982年型を1台買い足した。

 サイレンは鳴らないが、ホースに問題はない。実地では試しておらず、もっぱらは孫たちとの遊び道具だが、それでも、自分の土地で火災が起きたら、使いこなせる自信があるという。

 購入のきっかけは、昨年、ワイン名産地のナパやソノマ(Sonoma)一帯を襲った山火事「グラス・ファイア(Glass Fire)」の難を逃れたことだった。この火事では全体で約2万7000ヘクタール以上が焼失し、火はダンさんのワイナリーの2キロ近くまで迫った。

 山火事は、森林の自然のサイクルの一部だ。古い植生を焼き、発芽や植物の成長を促す。

 だが、地球の温暖化が進み、気象パターンが変化するにつれ、この地域では山火事の範囲や勢いが拡大し、頻度も増してきた。

 山火事の季節になるたびに、今年はどこまで燃え広がるのかという問題が新たな心配の種になっている。