【9月14日 People’s Daily】中国は2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を頂点から減少傾向に転じる「ピークアウト」を実現し、2060年までにCO2の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロとする「カーボンニュートラル」を実現すると表明している。この困難な目標の達成には科学技術のサポートが不可欠だ。中国の科学者は近年、国内初の炭素観測科学実験衛星「Tan Sat」により、世界の炭素フラックス(移動量)データを取得している。地球上のどの地域でCO2が排出され、吸収されているかという収支分析における空間・定量モニタリング能力を中国は備えるようになった。

 中国科学院大気物理研究所の劉毅(Liu Yi)氏の研究チームは英国の科学者と共同で、学術誌「Adovances in Atmospheric Sciences」に論文を発表した。劉毅氏は「大気観測により炭素の排出量と吸収量を計算する方法は、『広範囲で、はっきり観測できる』ことが利点だ。一方、地上観測は『正確かつ全面的に観測できる』ことに重点を置いており、相互に補完することができる」と説明。また、「研究者は衛星観測のデータ以外に、最新のコンピューターシステムにより大気中のCO2移動プロセスとすべての時間、地点のCO2含有量をシミュレーションできる。衛星観測とシミュレーションを連動し、実際の炭素フラックスに最も近い数値を割り出すことができる」と話す。

 国家リモートセンシングセンターの李加洪(Li Jiahong)チーフエンジニアは「炭素観測衛星で地球上のCO2濃度の分布データを提供することは、中国が気候変動問題に積極的行動を取り、大国としての責任を果たそうとしている表れである」と話す。

 地球温暖化防止のため、CO2などの温室効果ガスの全地球的な分布状況の調査・分析の必要性は高まっている。日本は2009年に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」を、米国は2014年に「OCO-2」を打ち上げた。米航空宇宙局(NASA)は2015年に世界のCO2分布図を公開。低緯度と中緯度の一部エリアは大気中のCO2濃度が危険水準濃度の400PPMを突破していたことが分かった。そして中国は2016年12月22日、世界で3番目となる炭素観測衛星「TanSat」を打ち上げた。

 炭素観測衛星は温室効果ガスによる赤外線吸収量やスペクトル強度などを観測し、気圧や温度などの情報も補助的に活用。一方で大気中の浮遊粒子などの要素をデータから排除することで、カラム濃度(地表面から宇宙空間までの気柱に存在する気体の濃度)を計算する。さらにデータを生かしたシミュレーションにより地球上のCO2量の変化を推定することで、炭素循環の基本的なデータベースを構築する。炭素衛星は多波長(マルチスペクトル)雲観測器とエアロゾル(浮遊ちり)観測計も搭載しており、雲や大気の微粒物質などを測量・除外することでCO2濃度を正確に計算し、PM2.5などの大気汚染の原因究明のための重要なデータも提供している。

 炭素衛星は、光合成をする植物が放出する弱い蛍光も測定する。これにより地球規模のCO2濃度の動態観測ができるだけでなく、地球規模の植物の光合成生産力を推計できる。一部の科学者は、蛍光観測こそ炭素観測衛星の最も重要なミッションであると唱えている。(c)People’s Daily/AFPBB News