【9月13日 AFP】(写真追加)米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)は15日、乗組員全員が初飛行の民間人で構成された宇宙船クルードラゴン(Crew Dragon)を打ち上げる。国際宇宙ステーション(ISS)よりも高高度の地球周回軌道上に滞在する3日間のミッションに、プロの宇宙飛行士は同乗しない。

「インスピレーション4(Inspiration4)」と名付けられたミッションに参加するのは、宇宙が誰にでも開かれていることを体現する4人だとされ、乗組員の座席はそれぞれ特定の価値観を象徴している。

 プロジェクトの企画者は、米決済処理企業シフト・フォー・ペイメンツ(Shift4 Payments)の創業者・最高経営責任者(CEO)で富豪のジャレド・アイザックマン(Jared Isaacman)氏(38)。クルードラゴンを自費でチャーターし、独創的な選考過程を通じて、無名の3人を同乗者として招待した。

 ミッションの船長は、アイザックマン氏が自ら務める。飛行機の操縦に情熱を注ぐ同氏は、軽量ジェット機による世界一周記録の保持者で、軍用機の操縦資格も有している。同氏の座席は「リーダーシップ」を象徴する。

■がんサバイバー、アルセノーさん

 ヘイリー・アルセノー(Hayley Arceneaux)さん(29)は子どもの頃、骨肉腫を患い、米テネシー州メンフィス(Memphis)にあるセント・ジュード小児科病院(St. Jude Children's Research Hospital)で治療を受けた。「インスピレーション4」は、この病院への募金活動でもある。

 現在この病院で医師助手として働くアルセノーさんが宇宙に行けば、米国人最年少で、人工装具を装着した人としては世界初となる。今回のミッションでは健康管理を担当し、その座席は「希望」を象徴する。

■教授で宇宙飛行士の最終選抜候補、プロクターさん

 米領グアム(Guam)生まれのサイアン・プロクター(Sian Proctor)さん(51)は、アリゾナ州の小さな大学で地質学を教える教授。父親は、アポロ(Apollo)計画進行中の米航空宇宙局(NASA)に勤務していた。

 ハワイで行われた火星滞在の模擬実験参加者で、NASAの宇宙飛行士募集に2回応募し、2009年には3500人の候補者の中から最終選考に残った。米国の黒人女性では史上4番目の宇宙行きとなる。

 今回のミッションでは飛行士と船長補佐を務め、座席は「繁栄」を象徴する。

■米空軍退役兵、センブロスキーさん

 イラク従軍経験を持つ米空軍退役兵のクリス・センブロスキー(Chris Sembroski)さん(42)は、米航空防衛機器大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)に勤務する。今回、セント・ジュード小児科病院に募金した人の中から選ばれた。

 センブロスキーさんは積み荷の管理と地上との通信を担当し、座席は「寛容」を象徴する。(c)AFP/Lucie AUBOURG