【9月13日 AFP】アフガニスタンを制圧したイスラム主義組織タリバン(Taliban)の戦闘員が、敵対する軍閥指導者で逃亡中のアブドルラシド・ドスタム(Abdul Rashid Dostum)前副大統領(67)の首都カブールにある豪邸を接収し、住んでいる。

 タリバン戦闘員に占拠された邸宅からは、かつての支配層のぜいたくな暮らしぶりが垣間見える。厳格なイスラム主義を掲げるタリバンにとっては、長年にわたる汚職の産物と映る。

 どこまでも続く長い廊下には分厚い緑色のじゅうたんが敷かれ、カラシニコフ(Kalashnikov)自動小銃を抱えた若い戦闘員がソファに体を深く沈めて眠っている。その後ろには大きな水槽が7個並び、外来種の魚が泳いでいる。

 AFPは見学ツアーに参加して邸宅を実際に見たが、その豪華さは大半の一般アフガン人にとって想像もできないようなものだった。

 大広間には巨大なガラスのシャンデリアがつり下げられ、迷宮のように連なる幾つものラウンジには大きなふかふかのソファが置かれている。トルコ石のタイルが敷き詰められた屋内プール、サウナやトルコ風の蒸し風呂、設備の整ったジムもある。

 広大な邸宅の一角にはガラスの天井に覆われた広さ数百平方メートルの温室があり、熱帯植物に囲まれてタリバン戦闘員がくつろいでいた。温室を見下ろせる中二階にはバーがしつらえられ、夜更かしと強い酒を好むことで知られるドスタム氏の退廃的な嗜好(しこう)を物語っている。

 この邸宅を目下取り仕切るのは、4州にまたがる軍事指揮権を有するカリ・サラフディン・アユービ(Qari Salahuddin Ayoubi)司令官だ。タリバン新政権でも特に有力な司令官の一人で、カブールが陥落した先月15日に、指揮下の150人を引き連れて入居した。

 だが、アユービ司令官はAFPに対し、自分たちが豪華な生活に慣れることはないと言明。「イスラム教では、ぜいたくな暮らしは望ましくない」と述べ、ぜいたくは「死後の世界」における楽園で得られるものだと付け加えた。

 豪邸の所有者であるドスタム氏は、空挺(くうてい)部隊員や共産主義運動の指導者、軍閥トップ、副大統領を歴任し、紛争で疲弊したアフガニスタンで40年間生き抜いてきた狡猾(こうかつ)な政治家だ。指揮下の部隊に関連して数々の戦争犯罪が指摘されているが、アシュラフ・ガニ(Ashraf Ghani)政権は、ドスタム氏の軍事的な知見とタリバンに対する激しい憎しみを政権維持に利用できると期待していた。

 だが、ドスタム氏は拠点を制圧され、ウズベキスタンへ逃れた。同氏は、ガニ政権の信用を失墜させた汚職や横領によって莫大(ばくだい)な利益を得たとみられている。(c)AFP/Emmanuel DUPARCQ