【9月12日 AFP】オーストラリアに生息するニオイガモに、聞いた音や声を記憶して再現する能力があり、ドアをバタンと閉める音や「お前は大ばかだ」という人の言葉をまねる様子を録音記録で確認したとする研究論文が発表された。

 生物学者のカレル・テンケイト(Carel ten Cate)氏は、オウムと同じくニオイガモが人の言葉をまねすると聞いて「とても信じられなかった」と語る。そこで、真偽を確かめるべく調査を開始した。

 資料や記録を何時間もかけて調べたところ、1987年に録音された「リッパー」と名付けられたニオイガモの不可解な鳴き声の録音記録にたどり着いた。リッパーは当時4歳で、キャンベラ近くのティドビンビラ自然保護区(Tidbinbilla Nature Reserve)で飼育されていた。

 録音記録の中でリッパーは何度も「You bloody foo」(お前は大ばかだ)と発声していた。「fool(ばか)」の語尾のLの音は、カモには発音が難しかったようで、聞き取れなかった。

 英国王立協会(Royal Society)の学術誌「フィロソフィカル・トランザクションズB(Philosophical Transactions of the Royal Society B)」に6日に発表された論文によると、リッパーのこの鳴き声は求愛行動に伴うものだった。

 雄のニオイガモは通常、ライバルの雄を追い払う際、足をばたつかせ尾を振りながら、繰り返し鳴く。論文によると、録音者のピーター・フラガー(Peter Fullagar)氏は、リッパーのケージに近づいて故意に怒らせようとしたという。

 すると、リッパーは誇示行動を始めたが、通常のニオイガモの鳴き声の代わりに「お前は大ばかだ」と暴言を吐いた。

 フラガー氏は、バタンとドアの閉まる音をリッパーがまねする様子も録音していた。超音波分析により、その音はリッパーが子ガモの頃に飼われていた水場の横の網戸が閉まる音に酷似していることが分かった。

 テンケイト氏は、リッパーが幼い頃に聞いた音を再現していたとみられる点が、今回の研究で最も重要な発見だったと指摘。「リッパーが示した類いの音声学習は、これまで鳴鳥類とハチドリ、オウムのみが有していると考えられていた」と述べている。

 動物の音声学習について特集したフィロソフィカル・トランザクションズBの最新号には、ゾウやイルカ、アザラシの発した音声に関する研究も掲載されている。(c)AFP/Natalie HANDEL