【9月12日 AFP】スリランカの野生動物公園から密猟されたゾウの子ども13頭が、裁判所の命令により密猟者に返された。当局者が10日、明らかにした。

 スリランカではゾウは神聖な動物とされており、野生ゾウの捕獲は違法だが、特別な許可をもらい、富の象徴として飼育する人も多い。

 捜査当局は2015年、仏教僧らが野生動物公園から密猟したゾウの赤ちゃん少なくとも13頭を押収した。

 だが警察の犯罪捜査局は先週、コロンボ(Colombo)の裁判所から、押収したゾウを密猟者に返すよう命じられ、物議を醸していた。同局は、新法では野生動物保護当局にペットとして登録すれば、ゾウを飼うことができると説明されたという。

 密猟された13頭のうち6頭は「ピンナワラのゾウの孤児院(Pinnawala Elephant Orphanage)」で飼育されていたが、鎖につながれトラックに載せられ運ばれた。もう7頭は同国南部の施設から飼い主に戻された。

 裁判所によると、15年1月にゴタバヤ・ラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領がピンナワラの孤児院に渡したゾウ2頭のうち1頭も返還された。大統領は当時、飼い続ける余裕がないと話したと報じられていた。

 当局者はAFPに対し、雌のチャリカ(Charika)はラジャパクサ氏に戻されたが、もう1頭の雌チャラカ(Charaka)は今も孤児院で飼育されていると語った。

 ゾウの専門家ジャヤンタ・ジャヤワルダナ(Jayantha Jayewardene)氏は、盗まれたゾウが密猟者に戻されたことにがくぜんとしており、「動物福祉が著しく後退した」と述べた。

 ジャヤワルダナ氏はAFPに対し、「非常に失望した」と話し、「国立公園での赤ちゃんゾウの密猟を助長するだけだ」と批判した。

 ジャヤワルダナ氏によると、15年までの10年間で約40頭の野生の子ゾウが盗まれ、1頭約12万5000ドル(約1400万円)で売られた可能性がある。密猟者は通常、母親ゾウを殺して子どもを捕獲するという。

 11年の調査では、スリランカには赤ちゃん約1100頭を含む7379頭のゾウが野生で生息していた。1900年は1万2000頭だった。

 映像は、ピンナワラのゾウの孤児院で撮影されていたゾウ。9日撮影。(c)AFP