【9月12日 AFP】イタリアで開催されていた第78回ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)で11日、最高賞の金獅子(Golden Lion)賞に、人工妊娠中絶をテーマにした仏作品『Happening(原題)』が選ばれた。主流はジェンダー問題を取り上げた作品だった。

 米テキサス州で人工妊娠中絶を制限する新法が導入される一方、メキシコでは最高裁判所が人工妊娠中絶を犯罪として罰することを違憲とする判決を下すなど、中絶をめぐる議論が再燃する中での受賞となった。

『Happening』は、1960年代のフランスで違法とされていた人工妊娠中絶を繊細ながらも衝撃的に描いた作品。オードレイ・ディヴァン(Audrey Diwan)監督は受賞に当たり「怒りと願いを込め、腹、内臓、心臓、頭すべてを注ぎ込んだ」と述べた。

 2021年は女性監督躍進の年となった。銀獅子(Silver Lion)賞(監督賞)は、西部劇『The Power of the Dog(原題)』のニュージーランドのジェーン・カンピオン(Jane Campion)監督に決まった。ベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)が主演を務める。

 脚本賞には、マギー・ギレンホール(Maggie Gyllenhaal)の監督デビュー作『The Lost Daughter(原題)』が選ばれた。キャリアと、母親であることを両立させる難しさを描いた作品で、アカデミー賞を受賞した英俳優オリヴィア・コールマン(Olivia Colman)が主演を務めている。

 カンピオン監督はセクハラ告発運動「#MeToo(私も)」の映画界への影響に言及し、「空気が変化している」と述べた。

「まるで女性にとってのベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊、アパルトヘイト(人種隔離政策)の終わりのようだ。女性の考え方、発言、行動に新しい感覚が生まれている」

 銀獅子賞(審査員大賞)は、イタリアのパオロ・ソレンティーノ(Paolo Sorrentino)監督の『Hand of God-神の手が触れた日-(The Hand of God)」が受賞した。イタリア南部ナポリ(Naples)での少年時代を描いた極めて個人的な作品。主演のフィリッポ・スコッティ(Filippo Scotti)は、最優秀新人俳優賞に選ばれた。

 映画祭は、アウト・オブ・コンペティション部門出品の『最後の決闘裁判(The Last Duel)』の上映で幕を閉じた。中世の決闘がテーマだが、女性が不当に扱われていた歴史を鮮明に描いている。マット・デイモン(Matt Damon)とベン・アフレック(Ben Affleck)が出演。

 アフレックはAFPのインタビューで、「人は誰でも人道的、共感的、誠実になろうとすればフェミニストでなければならないと考えている」と語った。(c)AFP/Eric Randolph and Alexandria Sage