■両親から受け継いだ頭脳

 その直感は、今季のウィンブルドンで見事に当たった。ラドゥカヌは、国際舞台にデビューしたばかりとは思えないほどの巧みなストロークと強打の組み合わせで勝ち上がり、最後は呼吸困難での棄権を強いられたが4回戦に進出した。メディアの質問に対しても驚くほど大人びた対応を見せた。

 そして全米ではウィンブルドンの悔しさを振り払い、大会制覇を果たした。飛び抜けた気持ちの強さは両親のおかげだという。

「中国人の母親に、幼い頃から規律や、他の人を敬う気持ちをたくさん教わった。そういう両親がいて、いつも励まされてきた。大きな期待をかけられたことで、私もいつもそれに応えられるように頑張ってきた」

 ウィンブルドンではそれまでで一番多かった25万ドル(約2750万円)の賞金を得たが、全米ではそれが小銭に思えるほどの250万ドル(約2億7500万円)という優勝賞金と、スポンサー契約も手に入る。

 すでにナイキ(Nike)とウィルソン(Wilson)、ティファニー(Tiffany)と契約しているラドゥカヌだが、スポンサーに名乗りを上げる企業はさらに増える。ブランドコンサルタントのマーセル・ノビル(Marcel Knobil)氏は、ラドゥカヌが人々の「ヒーロー」像にぴったり合うと話し、「数年のうちに年収1000万ポンド(約15億円)も十分狙えるようになるはずだ。決勝で勝てばその倍も簡単だろう」との見解を示している。

 幸い、ラドゥカヌには金融業界で働く両親から受け継いだ頭のよさがあり、数字には強い。4月には数学と経済学の2科目で、大学入学資格になるAレベル試験を受けた。ウィンブルドンでは、大会で勝ち上がれるなら学校の成績を犠牲にしてもいいと話していたラドゥカヌだが、今年乗っている彼女が、試験でも好成績を残したのは言うまでもない。(c)AFP/Jim SLATER with Pirate IRWIN