【9月14日 Xinhua News】中国浙江省(Zhejiang)文物考古研究所の研究者らはこのほど、同省を流れる銭塘江の中上流域で約9千年前に籾米(もみごめ)などを用いた酒の醸造が行われていたとする論文を発表した。同流域では、1万年余り前に野生のイネの栽培化が始まったとされる。

 同研究所の蒋楽平(Jiang Leping)研究員が金華市(Jinhua)浦江県(Pujiang)で上山遺跡を発見したのは2000年。周辺ではこれまでに同種の遺跡が19カ所見つかっており、いずれの遺跡からも稲作遺構が多く出土した。最も古い炭化イネは1万年余り前のものだと確認され、「水稲栽培の発祥は中国」とする説に多くの証拠をもたらした。同地域の遺跡は2006年、正式に「上山文化」と命名され、長江下流域で最も古い新石器文化となった。

 蒋氏らが12年に同省義烏市(Yiwu)城西街道橋頭村で発見した約9千~8700年前の橋頭遺跡も上山文化に属し、精美な彩陶(彩文土器)が大量に出土した。これらは世界最古の彩陶で、中国彩陶文化の重要な起源とされたが、約9千年前の酒の醸造の痕跡も残されていた。

 痕跡は一部の土器の残留物から確認された。米国ダートマス大学人類学部の王佳静(Wang Jiajing)助教授、蒋氏とその同僚の孫瀚竜(Sun Hanlong)氏が残留物を分析した結果、水稲やハトムギのほか、塊根植物のでんぷん粒と多くのかびや酵母が含まれていることが判明。でんぷん粒は穀物酒醸造に必要な糖化を経ており、かびの形態はコウジカビやクモノスカビと一致した。この2種類のカビは、東アジアや東南アジアで現在も酒の醸造に広く用いられている。

 蒋氏らの研究成果はこのほど、米学術誌「PLOS ONE」に掲載された。蒋氏は、中国南部の先住民が約9千年前にイネやハトムギを主原料、その他の植物の塊茎(かいけい)を補助原料として酒を醸造していたことが証明されたと説明した。王氏は、橋頭遺跡の人々が醸造した酒はこうじ酒だと指摘。かびの生えた穀物を観察し、試行錯誤を重ねることで原始的なこうじを作り出したのだろうと語った。

 橋頭遺跡では、人工の環濠(かんごう)を巡らせた中心的建築の盛土が発見された。彩陶は盛土の上の複数の器物坑から出土しており、同省で最も古い墓と遺体2体も見つかった。蒋氏は、人々がこの場所で祭祀(さいし)や葬儀を行い、酒を供えたのではないかとの見方を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News