【9月12日 AFP】スリランカは、国内の農業をすべて有機生産とする世界初の国となることを目指しているが、その取り組みのあおりを受けているのが、主要産業である紅茶だ。生産量が激減すれば、低迷している経済に新たな打撃を与えかねないという懸念も生まれている。

 ゴタバヤ・ラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は今年、化学肥料の輸入を禁止する方針を発表し、有機農業の推進を開始した。しかし茶園主は、10月にも生産が落ち込むと予想。シナモンやコショウ、さらにコメなどの主要産物の見通しも暗い。

 コロンボ(Colombo)南方160キロのアハンガマ(Ahangama)で世界有数の高級な紅茶を生産しているハーマン・グナラトナ(Herman Gunaratne)氏(76)は、化学肥料の輸入禁止により「紅茶業界は大混乱に陥っている」とし、政府が方針を変えない限り、スリランカの紅茶の年間平均生産量は約3億キロから半減する恐れがあると語った。

 スリランカは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機の真っただ中にある。国内総生産(GDP)は昨年、3%以上縮小。政府はプラス成長への回復を期待しているが、その見通しも新たな感染の波の影響で危うい。

 紅茶はスリランカの主要な輸出品目で、同国の輸出収入の約10%を占め、年間12億5000万ドル(約1370億円)以上をもたらしている。

 グナラトナ氏が生産する「バージンホワイト(Virgin White)」ティーはキロ当たり2000ドル(約22万円)の値が付く。同氏は、有機革命を主導するラジャパクサ大統領が起用した46人の専門家の一人だったが、先月、ラジャパクサ氏と意見が対立。大統領肝煎りの「グリーンな社会経済(Green Socio-Economy)」を推進する作業部会から外された。

 グナラトナ氏は、スリランカ産のセイロン紅茶の化学物質含有量はあらゆる茶の中でも最低レベルで、害はないと主張する。