【9月9日 AFP】米南北戦争(1861~65)中に奴隷制を支持する南部連合(Confederate States of America)が首都としていた米バージニア州リッチモンド(Richmond)で8日、南軍司令官ロバート・E・リー(Robert E. Lee)将軍の巨大な騎馬像が撤去された。像の撤去は、人種差別に抗議するデモの焦点となっていた。

 南北戦争で北バージニア軍(Army of Northern Virginia)を率いたリー将軍の銅像は、100年以上前から市内のモニュメント通り(Monument Avenue)にそびえる象徴的存在だった。

 厳重な警備の下、高さ6.4メートルの銅像がクレーンでつり上げられて高さ12メートルの花こう岩の台座から外されると、見守っていた数百人の群衆から歓声が上がった。人々が「さようなら」と繰り返し叫ぶ中、像はゆっくり地面に下ろされ、分解されてトラックで運び去られた。

 像の撤去を喜ぶ人々の輪の中にいた自治会長のムハンマド・アブドゥルラーマン(Muhammad Abdul-Rahman)さん(56)は、「この像は、白人が文化、政治、経済、スポーツ、音楽など生活のあらゆる面で最も優れていると示す目的で設計され、設置されたものだ」と指摘。「像の撤去によって、バージニア州の歴史、米国の歴史、そして私たちの町の歴史における汚点が取り除かれる」と語った。

 一方、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は8日、像の撤去に当たって出した声明で、リー将軍を「最高の戦略家だと多くの将軍たちは認めている」と絶賛。像の撤去は民主党の画策する破壊パターンの一つだと主張し、「極左勢力によってわれわれの文化が破壊されつつあり、われわれの歴史や遺産は善悪を問わず消し去られている。そんなことはさせてなるものか!」とつづった。

 南部連合の記念碑を擁護する人々は、誇り高い南部の伝統を記念するものであり撤去は歴史の抹消だと主張している。だが、歴史研究者らによれば、米南部に点在する記念碑の多くは人種差別を容認する人種隔離法が存在していた時代に、公民権運動への反発として建造されたものだという。(c)AFP/Bastien Inzaurralde with Chris Lefkow in Washington