【9月8日 AFP】新型コロナウイルスの流行第3波と闘うタイで、首都バンコクにある最大のスラム、クロントイ(Khlong Toei)での感染拡大が最大の懸念となっている。

 クロントイには約10万人が過密状態で暮らしている。1か月当たり150ドル(約1万7000円)で生活する住民にとって新型コロナウイルスの検査は手が出ないぜいたく品だ。

 この状況を受け、慈善団体「バンコク・コミュニティー・ヘルプ財団(Bangkok Community Help Foundation)」は、クロントイがバンコクに流行を広める感染源となるのを防ぐため、大規模検査を開始した。

 この検査で陽性が確認された場合、入院が確約される。先ごろの検査では約1000人のうち、50人近くが陽性だったという。

 同財団の共同創設者、フリソ・ポルダーファールト(Friso Poldervaart)氏は「非常に狭い空間に密集して大勢が暮らしている」と述べた。20平方メートルほどの家に10人が一緒に暮らしていることも多く、一人が新型コロナに感染していると、同居する全員に広がる可能性があるという。

「大抵の場合、(陽性が確認された人は)自宅隔離となり、自宅療養セットが渡される。問題は、ここでは家で一人になれないことだ」

 同財団は、検査をためらう住民を後押しするため、検査した住民にはコメやマンゴスチンジュース、昼食などを無料で配布している。

 タイは今年4月以降、深刻な流行に直面しており、累計感染者数は130万人以上、死者数は1万3000人に上る。

 また、経済は1997年のアジア通貨危機以来の最低水準となっている。

 ロックダウン(都市封鎖)は、すでに貧困状態にあるクロントイの多くの住民にとって、失業や収入が断たれることを意味する。

 6日に検査を受けたプラオピライ・ジャルーンポン(Praohpilai Jaroenpong)さん(23)は、スラム住民の多くは社会的なセーフティーネットがなく、無視されているように感じていると話した。

「状態は良くない。スラム住民には失業した人や食べ物をほとんど買えない人もいる」とプラオピライさんはAFPに述べた。

 同財団は、検査の他、1日3000食を救援物資や医薬品と共に提供している。(c)AFP