【9月8日 AFP】世界の畜産・酪農大手20社が排出する温室効果ガスの量が、ドイツや英国の経済活動による排出量を上回っていることが、欧州のNGOが7日に公開した報告書で分かった。

「ミート・アトラス(Meat Atlas)」は、独ベルリンに拠点を置くNGO「ハインリッヒ・ベル財団(Heinrich-Boll-Stiftung)」と環境NGO「地球の友ヨーロッパ(Friends of the Earth Europe)」の年刊誌で、畜産と肉の消費に関する公的な科学データをまとめている。

 これによると、畜産・酪農大手20社の排出量は二酸化炭素(CO2)換算で9億3200万トンに上った。うち4分の1以上はブラジルの世界的食肉加工大手JBSによるものだった。

 同じ測定基準で計算すると、ドイツ全体の排出量は9億トン余り、フランスや英国の排出量はその半分程度となる。

 国連(UN)の報告書によると、世界の温室効果ガス排出量の14.5%は畜産に起因する。

 ミート・アトラスは食肉需要は増加傾向にあると指摘している。毎年、3億2500万トンの肉を生産するために、750億頭の動物が殺されている。経済協力開発機構(OECD)は、食肉生産量は2029年までに4000万トン増加すると予測している。

 ミート・アトラスは畜産による排出量の他、飼料用大豆などの生産が環境に与える負荷の増加についても取り上げている。

 ミート・アトラスの共著者の一人、クリスティーネ・ケムニッツ(Christine Chemnitz)氏は、すでに約120万平方キロもの農地が大豆の生産に当てられており、その9割以上が飼料になっていると指摘した。

 大豆需要の増加が森林伐採を加速し、そのための土地開拓により生物多様性も脅かされているという。

 またミート・アトラスは、現在の条件で生産が続けられ、予想通りの速さで生産量が増加すれば、国連の持続可能な開発目標の2030年までの達成は不可能だと予測している。(c)AFP