【9月7日 東方新報】中国各地の博物館がこぞってオリジナル商品を販売し、Z世代(1990年代後半から2000年代生まれ)の若者をひきつけている。特に大ヒットしているのが、日本の「ガチャガチャ」のようなシリーズだ。

 中国では昨年から「盲盒(ブラインドボックス)」と呼ばれる玩具が一大ブームとなっている。箱の中にランダムに商品が入っており、買ってみるまで何が出てくるか分からない。主にかわいいキャラクターのフィギュアが中心だが、最近は「すべての物がブラインドボックスになる」と次々に新しい種類が誕生している。

 中華文明発祥の地・河南省(Henan)の河南博物院は昨年12月に考古学ブラインドボックス「失われた宝物」を発売した。これは単に中からおもちゃが出てくるものではない。大きな四角い箱を開けると、中には土が詰まっている。小さなスコップやブラシも入っており、自分で土を少しずつ掘り返していくと、ミニチュアの文化財が出てくる仕かけとなっている。中身は青銅器や宝玉、銅鏡、古銭などがあり、値段は数十元(約170円)から100元(約1700円)ほど。販売数は26万個を超え、売上額は2100万元(約3億5716万円)以上にのぼる。最近は新シリーズ「バラバラの宝物」も登場。ブラインドボックスの土を掘り返すといくつかの破片が登場し、自分で文化財を復元させるという遊び心満載のグッズだ。

 四川省(Sichuan)広漢市(Guanghan)の三星堆博物館も今年6月、オリジナルブラインドボックスを発売した。長江(揚子江、Yangtze River)上流文明の中心地だった三星堆遺跡では今年3月、3000年前の黄金仮面が出土したことで大きな話題となった。こちらは「本物の土を掘り起こす」がセールスポイント。三星堆遺跡周辺の土をブラインドボックスに入れ、発掘作業を疑似体験できる。購入する客の中には、「土を掘り起こすのがもったいない」という声すらある。

 中国では近年、博物館の新設ラッシュが続く。全国の博物館は2013年の3415館から2020年には5788館に増えた。2016年には中国のシンボルの一つ、北京の故宮博物院(The Palace Museum)で文化財を修復する職人たちを取り上げたドキュメンタリー番組「我在故宮修文物」が話題を呼び、博物館ブームの火付け役となった。さらにバラエティー番組の企画で、大学生たちがスニーカーなどの故宮(紫禁城、Forbidden City)のクリエーティブグッズを開発。各地の博物館が従来の概念にとらわれないオリジナル商品を創造するようになった。

 故宮博物院は、「荒野行動」などのゲームで有名なIT企業「網易(Net Ease)」と協力して故宮をテーマにしたモバイルゲームも開発。国家博物館はフランスの化粧品会社ロレアル(L'Oreal)と協力して中国の歴史上の女性をイメージした口紅を開発している。全国の博物館の文化・創造的製品市場は2019年で約78億元(約1327億円)に達し、その後も増え続けている。

 各地の博物館は仮想現実(VR)技術や3Dプリンター技術を活用した展示を取り入れており、週末や夏休みに博物館を訪れる若者が増えている。「古めかしく、代わり映えしない」という博物館のイメージは過去のものになりつつある。(c)東方新報/AFPBB News