【9月6日 東方新報】世界最大のオンラインゲーム市場となっている中国で、「18歳未満のゲームは週末のみ、しかも1日1時間だけ」という「ゲーム制限令」が出された。

 オンラインゲームの販売承認権限を持つ国家新聞出版署は8月30日、「18歳未満の子どもがオンラインゲームをするのは金、土、日曜と祝日の午後8~9時のみとする」と発表。オンラインゲームの有料アイテムに使う課金の上限も定めた。9月からの新年度開始に合わせ、子どものゲーム依存症対策として打ち出した。中国政府は2019年、18歳未満のゲームを平日は90分、週末は3時間までとし、午後10時から午前8時まで全面禁止とすると定めていたが、さらに規制を厳格化した。

 新方針はオンラインゲーム業界への義務として打ち出され、時間を超えてゲームをした子どもを処罰するものではない。未成年はログインする際に実名とID番号登録の義務化が徹底され、ゲーム企業は実名検証システムの立ち上げが必要になった。中国で大人気のゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」を手掛けるIT大手、騰訊(テンセント、Tencent)や、日本でも人気のゲーム「荒野行動」で知られる網易(NetEase)の株価は急落。テンセントは「方針を厳格に順守する」と表明し、網易の楊昭烜(Yang Zhaoxuan)最高財務責任者(CFO)は「18歳未満の人々による売上高はわが社の総収益の1%未満」と強調するなど、対応に追われた。

 中国国営新華社(Xinhua)通信系列のメディアは8月上旬、「精神的アヘンがまさかの数千億元産業に成長した」とする記事を発表。テンセントの「王者栄耀」を例に挙げてオンラインゲームを強く批判しており、近く新たな規制が発表されると推測されていた。

 中国ではゲーム人口が6億7000万人に上る。2020年の総売上高はコロナ禍の「巣ごもり需要」もあり、前年比21%増の2786億8700万元(約4兆7399億円)に達した。その8割近くがスマートフォンゲーム関連だ。調査によると未成年の62%は頻繁にオンラインゲームで遊び、平日1日当たり2時間以上ゲームをする未成年も13%に達している。このため保護者や教師の間から「子どもがゲームの世界に逃避している」「子どもがゲームのしすぎでイライラするようになり、取り上げようとすると暴れる」という訴えが噴出していた。

 中国政府は7月24日に、「小中学生の宿題を減らし、学外教育の負担を減らす」という「双減」政策を発表。小中学生向けの学習塾の新設を認めず、さらに学習塾は非営利団体に転換するよう求めた。過酷な受験戦争により、子どもが小さい頃から「勉強漬け」になっている現状を変える狙い。勉強の息抜き、もしくは逃避としてゲームに夢中になる子どもも多く、今度は「ゲーム漬け」を防ぐため新たな制限令を打ち出した。中国政府は勉強やゲームの代わりに文化・芸術活動やスポーツ、ボランティアを奨励している。

 中国では2000年に「ゲームは電子ヘロインだ」と批判が高まり、ゲーム機の製造販売が禁止された。しかしその結果、パソコンやスマートフォン向けのオンラインゲーム開発が進んだ。中国のゲーム業界は今回の「逆風」をどう乗り越えるか。今後は日本や欧米など海外市場で稼ぐ戦略を促進するとみられている。(c)東方新報/AFPBB News