【9月6日 People’s Daily】中国雲南省(Yunnan)の白馬雪山国立自然保護区の響古箐では、10組の「家族」から成る約60頭のウンナンシシバナザルが生息している。この地は人間が唯一、近距離で観察できる場所。巡視員とウンナンシシバナザルが特別な関係を築いており、巡視員が彼らを呼ぶと密林から姿を現し、観光客を驚かせている。

 鼻が高く、大きな目とピンクの唇を持つウンナンシシバナザルは中国南部にだけ生息する絶滅危惧種。標高2500~4700メートルの高山森林地帯で活動し、白馬雪山自然保護区には雲南省全体の6割が生息している。雲南省林業草原局によると、長期の保護活動の成果で1996年の13グループ、1000~1500頭から現在は23グループ、3300頭以上に増えている。

 響古箐周辺の村人はかつて狩猟や森林の伐採で生計を立てており、ウンナンシシバナザルの生息環境を脅かしていた。雲南省は1983年に白馬雪山自然保護区の設立を決め、多くの保護ステーションを設置した。

 狩猟をしていた村人は、自然の守護者へと変わった。巡視員は最初に3人が誕生し、現在は28人に増えた。最初の3人の1人が、今年で69歳となる余建華(Yu Jianhua)さんだ。14歳ぐらいから45歳まで狩猟で生計を立てていた余さんは1997年春に巡視員となり、朝6時から夜8時半までウンナンシシバナザルを見守り続け、野草やリンゴなども与えている。

 余さんは1頭ごとに名前をつけ、その叫び声で喜怒哀楽も分かるようになった。それは自然保護区の研究員がウンナンシシバナザルの家族構成や年齢、血縁関係などの「戸籍」を作るのに重要な役割を果たしている。自然保護区管理保護局の鐘泰(Zhong Tai)副局長は「近距離で生態を観察し、データ化を図ることが保護につながる」と強調する。

 余建華さんの息子、余忠華(Yu Zhonghua)さんも巡視員を務めて15年になる。忠華さんは「最初は山の中で食事をして野宿をして巡視活動をしていましたが、今は赤外線カメラで観察してデータを集め、密猟も防ぐようになりました」と話す。森林には多くのカメラが設置され、1台につき半径2キロを監視することができる。

 余忠華さんは「ウンナンシシバナザルは動植物の多い地域を好む。単一の樹種ばかりの人工林には行かないんです」と話す。雲南省林業草原局は2019年7月、エコロジー環境発展基金会などとウンナンシシバナザルの環境保護ネットワークを設立。2020年末までにクモスギ(雲杉)、タカネゴヨウ(華山松)、レイスギ(冷杉)など63万株を植樹し、約400ヘクタールの生態回廊を築いた。

 白馬雪山国立自然保護管理保護局長を昨年退任した謝紅芳(Xie Hongfang)さんは「長年続けてきた保護活動の成果がはっきり表れている。今後、ウンナンシシバナザルを見守る村民にさらに多くの恩恵を与えるようにしてほしい」と話している。(c)People’s Daily/AFPBB News