【9月4日 AFP】アフガニスタンのパンジシール渓谷(Panjshir Valley)を拠点にイスラム主義組織タリバン(Taliban)に対する武力闘争を続ける抵抗勢力は3日、タリバンからの「激しい」攻撃に応戦していることを明らかにした。

 首都カブールから約80キロの距離にあるパンジシール渓谷は、反タリバン勢力最後の拠点となっている。両者による和平交渉は失敗。先月、電撃的攻勢によりアフガニスタン国内のほぼ全域を制圧したタリバンは、パンジシールを掌握することで軍事作戦に終止符を打つことを目指している。

 3日夜にはパンジシールが陥落したとのうわさが広まり、カブール市内では祝砲が鳴り響いた。だがタリバンからの正式発表はなく、AFPの電話取材に応じた住民はパンジシール陥落の情報を否定している。

 オーストラリア在住のアフガン情勢アナリスト、ニシャンク・モトワニ(Nishank Motwani)氏は、「タリバンが圧倒的優位にある」との見方を示し、「タリバンは装備が充実しており、政府を瞬く間に陥落させたことで心理的優位に立っている」と説明した。

 タリバンは、同国を撤退した米軍が旧アフガン軍に提供した多数の武器や軍用品を手にしているほか、刑務所から釈放した受刑者らの加勢も得ている。モトワニ氏は「タリバンには自殺戦術の使用を含めた突撃隊もいる」と指摘した。反タリバン武装勢力と旧アフガン治安部隊で構成される民族抵抗戦線(NRF)も、パンジシール渓谷に多くの武器を保有しているとされる。

 タリバン幹部のアミール・カーン・ムタキ(Amir Khan Muttaqi)氏は1日の音声メッセージで、タリバン部隊が同渓谷を包囲したとし、現地の住民に対し、抵抗勢力に降伏を呼び掛けるよう要請。タリバンはその数時間後、攻撃を再開した。

 両勢力が相手側に大きな損失を与えたと主張しているものの、パンジシール渓谷では通信手段が限られており、AFPは現地からの情報を検証できていない。

 NRFの報道担当者であるアリ・マイサム・ナザリ(Ali Maisam Nazary)氏は3日、夜間にタリバンがさらなる攻撃を実施したことを明らかにした。ナザリ氏はパンジシール渓谷外にいるものの、NRFの指導者アフマド・マスード(Ahmad Massoud)氏と密に連絡を取っているとされる。

 ナザリ氏は「パンジシールでは激しい戦闘が起きている」と明かし、「彼(マスード氏)は渓谷の防衛で忙しい」と述べた。マスード氏の父親である故アフマド・シャー・マスード(Ahmad Shah Massoud)元国防相は、ソビエト連邦と第1次タリバン政権に対するゲリラ戦を率いた司令官で、「パンジシールの獅子」と呼ばれていた。(c)AFP