◼︎クラス分けが不正の動機に

 システムに欠陥があると感じているのはクランだけでなく、特に競泳ではクラス分けをめぐり激しい議論がなされている。

 8月28日にパラリンピック通算14個目の金メダルを獲得した米国のジェシカ・ロング(Jessica Long)は、成功を収めたパラアスリートが享受する名声や金銭的見返りが大きくなったため、「不正を働く動機は非常に大きい」と話す。昨年には、米誌スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)で、「愛するスポーツがこんな形で破壊され続けるのを見ていられない」とも語った。

 一方、国際パラリンピック委員会(IPC)はクラス分けシステムを擁護し、「残念ながら近年われわれが目にしているのは、競争の激化を受け入れられずにいる少数のアスリートの姿だ」との認識を示している。

「彼らはパラスポーツの改善された競争性を受け入れるのではなく、対戦相手のクラス分けを疑問視している。国際的なクラス分け担当者が、彼らのライバルのクラスは適正だと判断した事実があるにもかかわらずだ」

 しかしシステムを批判する側は、クラス分けの際に恣意(しい)的で非科学的な評価が行われていると指摘する。フランスの競泳選手クレア・スピオ(Claire Supiot)は、国営ニュースラジオ局フランス・アンフォ(Franceinfo)に対し、評価は「目視で行われ、担当者の感覚がベースになっている」と話した。 スピオは今年の再評価でS8からS9に変更となり、「表彰台入りの道が劇的に険しくなった」と主張している。

 また、より障害の重いクラスに入って競技でアドバンテージを得るため、システムを悪用しようとするアスリートが存在するとの疑惑もある。

 2017年に英紙ガーディアン(Guardian)は、匿名の元クラス分け担当者の話として、評価中により能力が制限されているように見せるため、熱いシャワーや冷たいシャワーを浴びたり、雪の中を転げ回ったり、手足にバンデージを巻いたりするアスリートがいたと報じている。(c)AFP/Clément VARANGES