【9月12日 AFPBB News】「ハーフという言葉についてどう思いますか?」「警察に職務質問で止められたことはありますか?」──ブラック・ライブズ・マター東京(BLM Tokyo)のジェイロン・カーター(Jaylon Carter)副代表(49)は、司会を務めるウェビナーでこうした議題をスピーカーたちに問いかける。日本や米国、世界各地で起きる人種差別や構造的不平等について対話を重ねながら考える機会を提供するためだ。

 カーター氏は、米国のミシガン州生まれでハワイで育った。日本に滞在して8年になる。暮らしやすいと感じているが、自身も駅で友人を待っている時に職務質問を受けたことがあったと振り返る。

 日本には肌の色による差別だけでなく、外国人の「イメージがある」として、知り合いの日系米国人のエピソードも語った。白人の英語講師と働いていたが、人員削減の際、勤務歴が長いにもかかわらず彼は解雇された。学校側の言い分は、白人の方が「より外国人っぽく見えて、生徒にとって良い経験になる」だった。

 BLM東京の広報・SNS担当の須永茉奈美(Manami Sunaga)氏(29)は、「外国人の中にヒエラルキーがある」と指摘。やはり英会話教室などでは、アジア人の方が白人よりも仕事を得にくいと話した。

■「恐怖や嫌悪は知らないために」

 2013年に米国で始まった黒人差別反対運動「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」は、黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが白人警官の拘束下で死亡した昨年の事件を機に、米国内だけでなく世界各地に広まった。

 BLM東京は昨年6月14日に渋谷で行われたデモに合わせて始動。人種差別問題への認識を高め、議論を促すために情報を発信している。活動は音楽イベントの開催やアートマガジンの発行など多岐にわたり、現在はユーチューブ(YouTube)チャンネルでウェビナーシリーズも展開している。

 活動を続ける目的は「教育」にあるとカーター氏は言う。BLM運動や米国で起きていること、日本社会で暮らす黒人の歴史、彼らが直面する課題について取り上げている。「恐怖や嫌悪は知らないために感じる。交流や対話を重ねることで(怖いと感じるものについて)知ってほしい」と語った。

 今年5月、茨城県の保健所が新型コロナウイルスの感染対策として、外国人と食事をしないよう注意喚起し、不適切だったとして撤回したことは記憶に新しい。

 カーター氏は「多様性と調和」を理念に掲げる東京五輪は、特に人種差別問題が好転する転機にならなかったと感じている。須永氏は、コロナ禍で日本人の意識が少し変わったと話す。あるメンバーは街を歩いていると「どこから来たの?」と声を掛けられていたが、渡航制限下にあることで「いつから日本に住んでいるの?」と質問が変わったという。外国人が観光客としてではなく、実際に日本で暮らしていることを受け入れ始めているのは興味深いと続けた。