【9月3日 AFP】カスピエン・グルタ(Caspien Gruta)君(12)は、フィリピン男子の通過儀礼である割礼が火山の噴火や新型コロナウイルスの流行により延期されたため、1年以上もからかいの対象になっていた。「今、割礼を受けなかったら恥をかくんじゃないかと心配」とグルタ君は語った。

 フィリピンは世界でも特に割礼率の高い国の一つ。割礼は数百年前から行われており、男の子が大人になるために重要だと広く受け止められている。他国では割礼に対する疑念が広まりつつあり、「児童虐待」と批判されることもある。一方、フィリピンでは問題視されることはほぼなく、男の子には割礼を受ける大きな圧力がかかっている。

 政府や地域の支援を受け開設される診療所では毎年、多数の男子が無料で割礼手術を受けているが、昨年の「割礼シーズン」はコロナ禍により、人々の記憶に残る限りで初めて中止された。これにより、グルタ君を含め多くの男の子は割礼を延期せざるを得なくなり、家族内の男性や男友達から嘲笑される憂き目にあってきた。

 首都マニラ南方にあるカビテ(Cavite)州は、5月以降に徐々に無料手術を再開した数少ない州の一つ。同州シラン(Silang)にある屋根付きのバスケットコートに設置された仮設診療所に並んだグルタ君は、周りの子たちよりも年長だった。20分の手術を終えると、「本物のフィリピン人になれた気がする。割礼を受けることはフィリピン人であることの一部だから」と語った。

 別の屋外診療所で手術を受けたアルメル・アルシロ(Almer Alciro)君(12)は、「僕が割礼を受けたのは、身長が伸びてスポーツがうまくなると言われたから」と話した。アルシロ君の家族は、私立病院での手術費用を捻出できなかった。私立病院での施術料は最高1万2000ペソ(約2万6000円)に上り、多くの人の月収を上回る。

 無料手術の再開を待つ間、アルシロ君は友達に「未割礼」と呼ばれ、からかわれていた。割礼が男らしさの象徴であるフィリピンでは、腰抜けと呼ばれることに近い悪口だ。手術後、アルシロ君は「やっと割礼を受けられてうれしい」と語った。

 集団割礼は、学校が夏休みに入る4~6月の猛暑期によく行われる。通常は1日に数百人が野外で手術を受けるが、今年はコロナ関連の規制により人数は大幅に減少。多くの地域ではコロナ流行が続いており、無料手術は再開していない。(c)AFP/Ron Lopez