【8月27日 AFP】古代ローマ時代に海辺で暮らしていた人々は現代のイタリア人よりずっと多く魚を食べていたことが、西暦79年のベズビオ火山(Mount Vesuvius)噴火による犠牲者の遺骨の調査で明らかになった。また、男性は女性よりも高級食材を多く食べていたことも分かった。

 調査結果は25日の米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された。英ヨーク大学(York University)のチーム率いる研究者らは、18世紀まで火山灰に埋もれていた古代ローマの沿岸都市ヘルクラネウム(Herculaneum)で発掘された成人の遺骨のうち17体について、アミノ酸分析を行った。アミノ酸はタンパク質の構成要素だ。

 アミノ酸の炭素・窒素の安定同位体比を調べて統計モデルにあてはめることで、異なる食品群の識別精度を従来より高めることができた。

 論文の主執筆者で博士課程の学生シルビア・ソンチン(Silvia Soncin)氏は「彼らの食事に占める海産物の割合が驚くほど高いことが分かった」とし、現代の地中海沿岸地域の住民の約3倍だったと話した。

■男女格差

 17人の内訳は男性11人、女性6人だったが、男女間の著しい違いも明らかになった。海産物から摂取するタンパク質が、男性は女性の平均1.5倍だったのだ。

 また、穀類からのタンパク質摂取も男性は女性よりやや多かった。女性は動物由来の食品や地元で取れた果物や野菜からより多くタンパク質を取っていた。

 研究チームによると、これにはいくつかの理由が考えられ、男性が女性より漁業に携わることが多かったことがその一つだ。また歴史的記録によると、マグロのようなある種の魚は古代ローマ社会では高級食品とみなされ、男性の手に渡ることが多かった。

 さらに別の理由として、ヘルクラネウムはエリート層の保養地として知られていたが、同時に多くの奴隷や奴隷から解放された人の街でもあったことが挙げられる。

 男性の奴隷は女性の奴隷よりも解放されるチャンスが高く、また一般的により若い年齢で解放されたため、望む食べ物を手に入れることができたというのだ。(c)AFP/Issam AHMED