【8月26日 AFP】世界で数百万人の命を奪い、経済をまひさせた新型コロナウイルスの起源を探る調査は、時間切れが迫っているにもかかわらず停滞していると、世界保健機関(WHO)の独立専門家らが25日、警告した。

 今年1月に中国へ派遣された専門家17人のうち11人は、英科学誌ネイチャー(Nature)に、今回の使命は「停滞しているプロセスの最初の一歩」を目指したものにすぎないとコメントした。

 専門家らは、「新型ウイルスの起源調査は、重大な岐路に立たされている」とした上で、「この重要な調査を行う機会は、急速に失われつつある」と指摘した。

 2019年末に中国・武漢(Wuhan)で初めて確認された新型ウイルスの生物学的痕跡を最も初期の病原巣までたどることは、証拠が消えたり破損したりするにつれ難しくなる。

 中国政府は特に、武漢の研究所から新型ウイルスが流出したとする説に反発しているが、ネイチャーの記事は、現時点でのデータは研究所流出説を裏付けるものではないとしている。六つの今後の優先調査項目も、研究所流出説には触れていない。

 むしろ専門家らは、中国内外での感染報告や抗体検査を通じて、初期の症例を追跡する必要があると強調した。また、野生動物の飼育場や、野生のコウモリについても調査を進める必要があると述べた。

「新型ウイルスに対する抗体が弱まるにつれ、さらなるサンプルの収集や、2019年12月以前に同ウイルスにさらされた可能性のある人々の検査を行っても、得られる成果は少なくなるだろう」と専門家らは懸念している。また、調査対象とすべき野生動物の飼育場の多くが閉鎖され、飼育されていた動物が殺されているとも指摘した。(c)AFP/Natalie HANDEL