【8月25日 東方新報】中国でかつて代表的な「夜の娯楽」だったカラオケ店が急激に閉店している。若者のカラオケ離れが進み、今や「オジサン、オバサンが集う時代遅れの遊び」とみられている。

 中国の企業情報サイト「企査査(Qichacha)」によると、今年3月時点でカラオケ店を経営する企業者は6万4000社。ピーク時の12万社からほぼ半減した。

 日本の経営スタイルの影響を受けたカラオケ店は1990年代後半から中国各地に広がり、2000年代に急成長を遂げたが、2015年ごろから斜陽化が始まった。不動産価格や人件費の高騰、著作権料の支払いなどで収益率が低下。また、公衆電話ボックスのような形をした1~2人向けの無人店舗「ミニカラオケ」がショッピングセンターやレストランなどに次々と設置され、カラオケ市場の「共食い」が起きた。さらに、「1人カラオケ」を楽しめるスマートフォンアプリが登場。メロディーに合わせて歌った曲を録音して友人とシェアすることができ、カラオケ店離れに拍車を掛けた。そして新型コロナウイルス感染症が流行した2020年は多くのカラオケ店が一時休業に追い込まれ、業界の売上高は前年比53.3ポイント減の596億9000万元(約1兆12億円)に落ち込んだ。

 若者のカラオケ離れは特に顕著だ。中国の10代後半から30代の間では今、「劇本殺」という体験型ゲーム店で遊ぶことが流行している。架空の殺人事件を巡り、個別の役を割り振られた参加者たちが探偵ドラマのように推理し、犯人役を突き止めるもの。店舗の貸衣装を着てメークをすることもあり、ドラマの俳優のような体験ができるのが人気だ。カラオケ店から劇本殺の店に変更する店舗も増えている。上海市でくら替えした経営者は「カラオケ店は値下げ競争が続き、5人向けのカラオケルームの値段は4時間でたったの169元(約2865円)。劇本殺は5人のパーティーで1人138元(約2339円)の参加料が取れる」と説明する。他にも「脱出ゲーム」やボードゲーム、カードゲームの店舗が人気となり、「もう何年もカラオケに行っていない」という若者は多い。

 最近のカラオケ店は、若い頃にカラオケを楽しんだ40代以上の「オジサン、オバサン」が懐メロを歌う場所というイメージが定着しつつある。カラオケ業界では、中高年により重点を置いた店舗経営や、パーティー利用を想定した経営モデルや高級化路線などで生き残りを図ろうとしている。(c)東方新報/AFPBB News