【8月28日 AFP】アルプス(Alps)モンブラン(Mont Blanc)山系のイタリア側で、科学者らが解け続ける氷河を絶え間なく監視している。気温上昇による崩落の危険が、下方の渓谷を脅かしているからだ。

 イタリア北西部のフランスとの国境地帯、モンブラン山系の高峰グランドジョラス(Grand Jorasses)の南壁を見上げる標高2700メートル付近にあるプランパンシュー(Planpincieux)氷河は、集落の上にせり出している。

 プランパンシュー氷河は、基底部まで凍結している極地氷河とは異なる「温暖氷河」として知られている。表層下には水があり、その上を氷塊がより速いペースで滑り落ちる可能性がある。

 下方にあるバルフェレット(Val Ferret)渓谷について専門家らは、予想しがたく危険な状況にあると指摘する。

「著しく気温が上昇していることで、『氷底水流』がより急速に形成されている」とアオスタ渓谷(Aosta Valley)地域の自然災害管理当局のバレリオ・セゴール(Valerio Segor)氏はAFPに語った。

 プランパンシュー氷河は以前は岩盤上のもっと安定した位置にあり、亀裂も少なくもっと厚みがあったと語るのはパオロ・ペレ(Paolo Perret)氏。リゾート地クールマイヨール(Courmayeur)を拠点とする非営利山岳安全協会「Fondazione Montagne Sicura」の氷河専門家だ。

 しかし、気候変動による気温上昇のため「滑らかで急勾配の斜面に後退し、不安定な状態にある」とペレ氏は付け加えた。

 プランパンシュー氷河の動きは決して無視できない。極端な例では、1日150センチほど滑り落ちることもあるという。

 対照的に、さらに上方の海抜4000メートル付近にそびえる極地氷河のウィンパー(Whymper)氷塔(氷河のクレバスに囲まれた塔状の氷塊)は1日に2~20センチ滑る程度だが、「崩落の脅威」になるとペレ氏は説明した。

 昨年10月、1万5000平方メートルにおよぶ巨大な氷塊がウィンパー氷塔から転げ落ちたのは、当局が下方の登山道を閉鎖した翌日のことだった。

 プランパンシュー氷河やその上方にある氷河の動きは、レーダーで子細に監視されている。この地域の安全計画はさまざまな災害シナリオを想定している。

「極端なシナリオ」では、80万立方メートルの氷塊が下方の村や道路に落ちてくるとセゴール氏は言う。「しかし、氷河が本当にその通りに動くかどうか、確実な保証はまったくない」 (c)AFP/Andrea Bernardi with Alexandria Sage in Rome